聖セバスチャンは多くの画家の創作意欲を刺激し、おびただしい数の作品が存在する。 ボッティチェリやダリも描いている。  三島由紀夫はと言えば、一九六八年、自らが聖セバスチャンに扮し、若き篠山紀信さんに撮影させている。 矢は計三本で、わき腹と腹に一本ずつ、残る一本は何とわき毛に刺さっている! わき毛に矢が刺さっている構図のものは、私か見た限りにおいては一六~一七世紀のイタリアの画家、グイードーレーユによる『聖セバスチャンの殉教』と三島版だけだった。 レーユの構図を三島がまねたのだろう。 聖セバスチャンの裸体の一番重要な部分はわき毛であると、彼は誰よりもよく知っていたのではないだろうか。 田山花袋と「女の匂い」 女の性フェロモンの最有力候補はEST(エストラテトラエノール)である。 こちらについても、やはりサヴィ″クらの研究でほとんど証明されたようなものだ。  ESTは女の尿に多く含まれるが、ANDと同じように尿以外にも、あちこちから漏れ出ているとみてよい。  ちなみに性フェロモンについても、性ホルモンと同じことが言え、男の性フェロモンは男だけに存在するのではなく、女にもある。 その濃度などが違うのである(もちろん男の方が濃度が高い)。  女の性フェロモンについても同様で、女だけでなく、男にも存在し、濃度などが違うのだ(もちろん女の方が濃度が高い)。  このESTが男を欲情させることが示されている文学作品はないものかと探したところ、田山花袋の『蒲団』がどうもそのようだということがわかった。 学生時代にタイトルだけは習ったが(確か、自然主義文学の代表作品だと)、内容までは教えてもらえなかった。