「ギュスターヴ・モロー サロメと宿命の女たち」展
フランス・パリにあるギュスターヴ・モロー美術館と
あべのハルカス美術館の共同企画として
4年以上前から準備が進められてきました。
東京→大阪→福岡と続く巡回展です。
※取材で伺い、会場内は特別の許可を得て撮影しています。
会場に並ぶのは98点。
油絵54点、水彩画・素描が42点、資料2点で。
特に水彩・素描は、1館のみの公開という縛りがあり
東京・大阪・福岡とそれぞれ別の作品が並びます。
大阪会場のあべのハルカス美術館でしか見られない作品がたくさんあるということなんです
ギュスターヴ・モロー。
フランス「象徴主義」の巨匠です。
彼は人間の内面を見つめ、目に見えないものを描こうとしました。
≪24歳の自画像≫
1850年 油彩/カンヴァス
時は、19世紀末のフランス。
見たものをそのまま描く「写実主義」が主流だった時代
印象派が生まれた時代でもありました。
今回の展覧会では女性にスポットを当てています。
といってもただの女性ではありません。
「ファム・ファタル」
男性を誘惑し、破滅に導く美しい女。
まさに危険な香りがプンプンします。
第1章 モローが愛した女たち
裕福な家庭に生まれたモロー。
妹カミュ―が13歳で早世し
両親の愛情を一身に受けることになります。
父親が亡くなった後は母親と二人暮らしに。
強すぎる母親との絆を象徴するかのようなメモも残されています。
一生独身を貫いたモローですが
30年近くも共に過ごした恋人がいました。
10歳年下のアレクサンドリーヌ・デュルー。
第1章では、モローが愛した、愛された女性を描いた作品などが並びます。
第2章 ≪出現≫とサメロ
旧約聖書に登場するユダヤの王女「サメロ」
ヘロデ王の誕生日の祝宴で舞い、
19世紀末には、男たちを惑わす妖女「ファム・ファタル」へと変貌します。
≪出現≫
1876年頃 油彩/カンヴァス
半裸の美女と聖人ヨハネの首が対峙する衝撃的な構図の≪出現≫
実は、当時サロンに出品され話題になったのは水彩画の≪出現≫でした。
展示されている油彩は未完のままアトリエに残され、
晩年になってから背景に線描が描き加えられたそうです。
第3章 宿命の女たち
神話や聖書に登場する、ありとあらゆる女性「ファム・ファタル」たちが登場します。
トロイア戦争を引き起こすきっかけとなった絶世の美女ヘレネ
美しい歌声で男を惑わし海に引き込む魔物セイレーン
大神ゼウスが恋したエウロペなどなど
色彩の美しさにもご注目ください。
第4章 ≪一角獣≫と純潔の乙女
様々な「ファム・ファタル」を生み出したモローですが
一方で、けがれなき乙女も描き出しました。
処女だけが捕獲できる一角獣(ユニコーン)
うっとりとした表情でしもべと化した一角獣
それを見つめる乙女の視線は何となく冷たさをはらんでいるような。
もしかしたら、純潔の乙女こそが、
無条件に男や動物を惑わす「ファム・ファタル」なのかも・・・
象徴主義の巨匠、ギュスターヴ・モローが描く女たち。
神秘的なその姿の中に
あなたは何を感じますか?
「ギュスターヴ・モロー サメロと宿命の女たち展」
あべのハルカス美術館で
9月23日(月・祝)まで開かれています。