あべのハルカス美術館で開催中の「奈良西大寺展」
2015年に、西大寺が開創1250年を迎えたことから、その記念事業として開催されています。
※取材で伺い、会場内は特別の許可を得て撮影しています。
東京→大阪→山口の巡回展ですが、場所柄の特色も盛り込まれています。
大阪では、近畿地方のお寺を手厚く扱っています。
西大寺とは・・・
『天平宝字8年(764)9月11日、藤原仲麻呂(恵美押勝)の反乱の発覚に際して、孝謙上皇はその当日に反乱鎮圧を祈願して、『金光明経』などに鎮護国家の守護神として登場する四天王像を造立することを誓願されました。翌年の天平神護元年(765)に孝謙上皇は重祚して称徳天皇となり、誓いを果たして金銅製の四天王像を鋳造されました。これが西大寺のそもそものおこりです』
西大寺HPより
第1章 西大寺の創建
奈良時代の創建から平安時代にかけての西大寺の有様を紹介しています。
出迎えてくれるのは、西大寺を創建した称徳天皇。
《称徳天皇像》住吉広保
絹本著色・江戸時代(18世紀) 奈良・西大寺 ↓
江戸時代の大和絵の御用絵師住吉広保による。毎年8月4日の称徳天皇忌(命日)に法要が営まれ、その際、本尊として掲げられます。
西大寺には創建当時、東塔・西塔という二つの五重塔がありました。そのどちらかの芯柱を中心に四方に4体の仏像が収められていました。それが《塔本四仏坐像》
今回は当時の様子を再現しようということで、仏像はそれぞれの方角を向いています。
《釈迦如来》 北
《阿弥陀如来》 西
《宝生如来》 南
《阿閦如来》 東
木芯乾漆技法(像の概形を木彫で作り、この上に麻布を貼り、漆とおが屑を混ぜたものを盛り上げて完成させる技法)で作られています。
第2章 叡尊をめぐる信仰の美術
鎌倉時代、叡尊が西大寺を復興したころやその直後の時期に、西大寺や奈良周辺の一門の寺院で制作された絵画・工芸品などが並びます。
国宝 《興正菩薩坐像》 善春
木造彩色・鎌倉時代(弘安3年 1280)
奈良西大寺 ↓
西大寺中興の祖、叡尊80歳の寿像(本人が存命中に作っておく肖像彫刻などのこと)です。
叡尊の活動理念は「興法利生」
「興法」は当時乱れていた戒律を復興し、お釈迦様の時代に立ち戻ろう。「利生」は困窮している人々を救おう。
その思いをもって布教活動を行っていました。
こちらは、屋根のところにお釈迦様の遺骨「仏舎利」が収められている壇塔。霊宝として永く伝えるため、文永7年(1270)叡尊自らが願主となって造立しました。
国宝《金堂宝塔(壇塔)》 ↑
鎌倉時代(文永7年 1270)
奈良・西大寺
「利生」人々を救うものの象徴として、叡尊の周辺では数多くの文殊菩薩像が作られました。
そして、西大寺本堂、現在のご本尊もいらっしゃいます。
重要文化財 《釈迦如来立像》
善慶 他 鎌倉時代(建長元年 1249)
奈良・西大寺
京都嵯峨の清凉寺には、インドから中国を経て日本に伝わったとされる、釈迦如来像があります。それを叡尊が中心となって模刻したのがこの釈迦如来立像です。
頭の螺髪が縄を編んだような模様になっていたり、衣(袈裟)の付け方が首のすぐそばまで迫っていたり、裾が三段になっていたりと、細部まで再現されています。
第3章 真言律宗の発展と一門の名宝
全国にある西大寺の末寺関係のコーナー。
8月6日までの期間限定で公開されている吉祥天立像についてはこちら↓
http://ameblo.jp/polaris-pora/entry-12297443305.html
音声ガイドは市川海老蔵さん。
会場に二代目鳥居清信が歌舞伎「矢の根五郎」を描いた絵馬があります。(一番左)
矢の根五郎を演じたのが二代目市川海老蔵、ということで、当代の海老蔵さんが音声ガイドに登場となったそうです。
国宝6点、重要文化財36点を含む80点が並びます。
壮観です
会場内にいると、凛とした気持ちになります。
当時の僧侶たちの息遣いが聞こえてきそうな雰囲気です。
今度は、お寺に安置された姿を見てみたいなあ、そんな気持ちにもなりました。
特別展「奈良西大寺展 叡尊と一門の名宝」は9月24日まであべのハルカス美術館で開催されています。
https://www.aham.jp/exhibition/future/saidaijitemple/