紅葉もすっかり終わりました。

庭のシダレモミジもすっかり葉が落ちてしまいました。

母は認知症が出始めた頃、このモミジの葉をホウキでたたき落としてしまいました。

毎日落ちてくる枯れ葉を掃除するのが厄介だったのでしょう。

母はそういう人でした。

花や紅葉を楽しむような情緒は無く、生活を優先して生きる姿勢を持っていました。

父が木を植えても自分の生活に影響し出すと切ってしまえとなりました。

このモミジが切ってしまえとならずに生き延びたのは何故なんだろう。

母に葉っぱを叩き落とされていじけたように傾いてしまった幹を何とか矯正してやれないものか、せっかく生き延びてきたのだから。

今の季節に庭木は剪定するようで、中でもSさんはこの高い檜葉の木を自分で剪定していますが、いったいいつまで出来ることでしょう。

 

私は高所での作業が怖くなってしまい脚立を使うだけでも足が震ってしまいます。

若い頃は屋上から屋上へ飛び移って失敗したり、バイクで崖から飛んで失敗したりとトムクルーズばりだったんですけど。

 

母はもちろん高所作業はしませんでしたが、低所作業には長けていました。

主に地べた表面での草取り作業に専念していたようです。

そしてこの庭にゴロゴロ入れられている岩につまずいて寿命を縮めてしまうことになりました。

大腿骨を骨折して病院のベッドに寝ている間に認知症が表れました。

外部と接触を持ちたがらない母なので人に悪影響を及ぼすことのない良性の認知症でした。

記憶の消失を少しでも遅らせられないかと母を良く知るヘルパーさんに入ってもらいましたが残念な結果でした。

母の認知症はゆっくり進行しましたが快方に向かうことはありません。

やがて何もかも忘れ去ってソファーベッドに横になっているようになりました。

でも、ムクッと起き上がって今日の仕事をしてくることだけは忘れませんでした。

戻ってくると「メボまで取ってテンテンにしてきた」と、ニコニコ嬉しそうな顔をしてそう言うのです。

母の人生は草取り人生だったのでしょう。

私は野菜作り人生だと思っていましたがそちらは忘れ去られてしまいました。

それ以外にありません、いつも土と同化していたのです。

それを想うと私は少しばかり頭に不思議な電流が流れるのです。