私の母はずっと田舎暮らしをしてきましたが、田舎には住みづらい「草1本抜かない主婦」では無く「草1本も生やさない」主婦でした。
つまり田舎暮らしには適応していたと言えるでしょう。
私はそんな母の草1本生えていない敷地を引き継いだのですが、6年も経つと草の数は全宇宙の星の数より増えてしまいました。
その草を母が居たときのように戻すにはどうしたら良いのか?
田舎に来て初期の頃お隣の凄腕主婦kさんに草取りの方法を尋ねたことがありました。
すると丁寧に教えてくれました。
まず一気に草を取ろうなんて絶対に思わないこと無理なんだから。
そして草の1本1本を抜いて手にとって各々の草の特性を教えてくれた。
性格の良い草や悪い草が有るが共通するのは種が落ちる前に退治しないとアウトであるということ。
種を落としてしまったら1本だった草が後年数十倍数百倍に増えるという恐ろしい事実を。
種を落とした後の親草を抜いて駆遂したところで後年仕事量は数百倍になる覚悟をしておかなければならない。
その時点でもう終わっていると言っても良く、後は数百倍が数百倍と、毎年どんどん増えていくのだ。
母は私の近くから居なくなったと思うと外に出て草を取っていた。
夏の炎天下でもそれは行われていた。
あの自殺的行為には深い意味があったのだと今では理解できる。
母は今日の仕事をサボると苦労が数百倍に増えることを長い経験則として知っていたのだ。
そして取った草は必ず燃やしていた、燃やさないと種は生きているからだ。
母はやはり凄腕主婦であった訳だ。
そしてkさんは「○○さん(母)は一本も生やさなかったわねえ」と言って私に具体的に草取りの仕方を教えてくれた。
「こうやって1m四方の線を書いてその中の草を今日全部抜くのよ、1本たりとも残さずにね」
「明日はその隣の1m四方を全部取るの、それを毎日休まずにやっていくことね」
「やみくもにあちこちでやると取り残すから、それが数百倍に増えてしまうのよ」
「1年以内に元の場所に戻ってきて、又繰り返すの、永遠にね」
「草は確実に根絶やしにしていくことが大切なのよ、私の畑を見てみなさい、数十年間1日たりとも怠らなかった結果なのよ」
そして私は3日目くらいにその作業に飽きてやめてしまった。
よって、今は取り返しの付かないことになってしまった。
今からでも又始めてみようかな。
1日1m四方をやって1年では最大365平米か、なるほどそんなもんだなうちの敷地は、母はそれを知ってやっていたんだ。
母にはマス目が見えていて、今日やっておかなければならない仕事が有ったのだ。
元気だった頃の母がよく言っていた「メボまで取ってテンテンにしてきた」という、
満足げな声が聞こえている。