米農家?のhさんの場合を書くのですが、米価についてというより、hさんの人柄に重点を置いて書きたいと思います。
hさんは私より10歳年上で独身一人暮らしです。
米とお茶を作っています。
野菜は作りません。
「野菜はスーパーで買えば良い」という主義です。
でも自分は野菜も買いません。
調理というものをしないからです。
台所に味噌以外の調味料は有りません。
おかずはスーパーの惣菜売り場で買ってきます。
米農家ですから「サトウのごはん」なんかは絶対買いません。
米は自分で作ったのを穀物冷蔵庫に保管してあります。
ご飯はガス炊飯器で毎朝炊きます。
何合の米を炊くのか正確には知りませんが、お茶碗はどんぶりです。
hさんは私の知る限り地球上で一番善良な人です。
私の家の田んぼを太古の昔からずっと作り続けてくれています。
私の母が元気だった頃はhさんの手伝いをしていたようですが、母が遠くを見てしまってからはhさんに全依存してきました。
その私の家の田んぼを1反と、hさん自身の田んぼが1反5畝有って、計2反5畝(25アール)の田んぼで米を作っています。
本当はもっと田んぼが有るのですがこれ以上米を作る必要が無いので、hさんもまた人に田んぼを作ってもらっているのです。
25アールは山間地のこのあたりでは農家の平均的耕作面積です、全国平均からはぐんと少ない面積です。
どれくらい米が獲れるかというと1反あたり8俵くらいですから2反5畝では20俵くらいになります。
米の銘柄はコシヒカリですが年々温暖化の影響で作りにくくなってきたようです。
米価というテーマからは、hさんが毎日食べている米は価格にするといったいいくらぐらいに相当するのか?ということでしょうから、そのようにとらえて計算します。
hさんは一人暮らしですから米は良く食べても年に2俵というところでしょう。
その2俵のお米にかかるお金はいくらくらいになるかということですね。
まず、hさんに入ってくるお金(収入)はどれほどか?今年の新米で予想すると、
私が買い上げる4俵が前に書いたように消費者米価+αの1俵6万5千円ですから26万円。
もう1軒近所の知り合いに2俵を直接売りますが、値段は生産者米価より少し安くしてあげているようです。
今年の生産者米価はまだはっきりとしませんが、おそらく去年よりかなり高くなって2万4千円(5kg換算2000円)くらいになるのではないでしょうか、hさんはそれを2万円で売ってあげるのではないかと思いますから2俵で4万円です。
私が買う4俵26万と知り合いに売る2俵4万の合計30万円、米の売買で得る収入はそれだけです。
他に国の補助金(中山間地直接支払い)が1反あたり1万、2反5畝で2万5千円入ります。
合計すると32万5千円です。
それがすべての収入です。
えっ、なんで、残ったお米はどうするの?
収穫した20俵から自分で食べる2俵、私が買う4俵、知り合いに売る2俵を引いた残り12俵は何処へ行くの?
それはhさんの姉さん夫婦と甥っ子二人の家庭に配られます、ただであげるのです、遠方までhさんが自ら軽トラに載せて運んでいくのです(積みきれない分は取りに来るようですが)。
ここまでで20俵の収穫に対して32万5千円の収入だから1俵1万6千250円勘定か、まあまあじゃん、そう思った貴方は何も解っていません。
今度は出て行くお金(支出)を計算してみましょう。
まず、苗代・肥料代・農薬代等必要経費が1反あたり約10万かかるので2反5畝で25万出て行きます。
燃料代(軽油・ガソリン・混合油)が、およそ3万出て行きます。
機械の部品や修理費、草刈り機の刃など消耗品代として3万出て行きます。
これら経費は近年価格が高騰してしまいました。
次に生産設備の減価償却費を計算します。
軽トラや農業倉庫は米の生産だけに必要なものではないので除きます。
トラクター270万
田植え機120万
コンバイン(補機含む)200万
籾すり機50万
乾燥機70万
消毒器(自走式動噴)50万
自走式畦草刈り機35万
背負式草刈機9万円
細かい生産設備はまだ有るけど私が把握できて無いので除いて、トータルで約800万です。
hさんはすべて新品購入ですが中古にすれば7掛けくらいにはなりますね。
耐用年数は普通30年くらいでしょうが、hさんの場合は使い方が上手で維持管理も優れているので40年としておきましょう。
すると1年分の減価償却費は20万です。
それにhさんは真っ正直に農業所得申告をして、米の収益分で5千円程の所得税を納めています。
以上で年間総支出は51万5千円になります。
収入から支出を引くと19万円の赤字となります。
自分で食べる2俵の米を得るのに19万円かかる、といえます。
1俵あたり9万5千円(5kg換算7917円)の米なのです。
ここから先は私と同じように1年間に渡って穀物冷蔵庫で保管していくので電気代や精米代がかかっていきます。
電気代は4俵でも2俵でもそれほど大きく変わりませんから1俵あたりの保存コストは私の倍かかると考えて良いでしょう。
ざっと、1俵12万(5kg換算10000円)の米になってしまうんですね。
そう考えるとスーパーの米って安いでしょう?
ちょっと待って、親戚にあげた分を仮に売ったとすればどうなるの?(普通は売るでしょ)。
ハイ、計算してみましょう。
12俵を生産者米価1俵2万4千円から少し安くしてやって2万円で売ったとしましょう。
収入が24万増えます。
赤字は丁度埋め合わされ、hさんは自分で食べる分の米2俵をただで得ました。
それだけです。
あなたもやってみたらどうですか、食べる米を得るためだけに、毎日々働くことができますか?
このあたりの米農家はだいたいこのような実態です。
さて、ここからはhさん特有の世界に入っていきます。
お茶も作っていると書きましたが、hさんのお茶畑は私の目見当で10アールくらいでしょうか?
そんな狭い面積であっても、もっと本格的な面積であっても、お茶作りにかかる手間は一緒です。
年に何回も刈り込みを行い、肥料を施し、消毒をし、寒冷紗という霜よけのシートを覆せたり取ったり忙しく、きめ細かく愛情を注ぎ込まないと美味しいお茶は出来ません。
現在はもうそんな手間のかかるお茶作りはせずに、茶株も抜いてしまって太陽光パネルを植える農家が増えています。
そんな中でずっとお茶作りへの情熱を維持してきたhさんの上質のお茶は、1グラムも市場で売られることはありません。
自分が飲む以外のお茶は姉さん夫婦と甥っ子二人の家に送ってやって、他にも何軒かに送ってやって、私と私の姉夫婦にまでくれて終わりです。
米とよく似たことになるのですが、米よりも採算性という面では更に悪いでしょうね。
私は毎年茶摘みのお手伝いはさせていただきますが、hさん、いつまで続けるつもりなんでしょうね。今年は日記にも書いたようにお茶刈り機の修理も発生し、私もできるだけ協力はしましたが消耗部品等に結構なお金が要ってしまいました。
悪いタイミングに今年は建てて50年経つ倉庫の手動シャッターが壊れてトラクターの出し入れが出来なくなってしまい、急遽私も応援してシャッターを引きずり出してみたら金属シャフトが摩滅していて修理は不可能、hさんは新しい電動シャッターに交換したら半額にしてくれて50万だったと喜んでいたので、私はもともと値段は50万なんですよとは言えなかったし、電動にする必要性もなかったのでは?とも言えなかったですよ。
その後にトラクターのラジオが壊れて新品に替えてもらったら5万円だったと言うので、なんで私に言わなかったんだろう?私が古いラジオ直しているの知っていたでしょうと思ったり、もう、業者にはカモネギなんですよ、決してお金持ってる訳ではなくただただ善人なだけなんですよ。
そんなんで米価から離れてしまった話で終わります。