親子2世帯住宅のことかしら?と、思った方には少々違う世界の話になります。

釣りの師匠O君の自宅は「夫婦2世帯住宅」です。

日本の戸籍制度では夫婦=1世帯のようですからあり得ない言葉なのかも知れませんが有るのです。

一級建築士のO君は仲間内には「一級建築漁師」ということで通っています。

彼の人生においては常に一級建築士より釣ってくる魚の価値の方が高い位置にありました。

釣り場に向かう車の中では30分ごとに思い出したように「新しい嫁さん欲しいのう」とため息まじりに言うのが口癖です。

事情を知っている私達には言葉の最初にあるべき「もう1人、、、」が省略されていることはわかっているのですが、知らない人の場合にはO君の省略形は有効に作用するようなのです。

その省略された部位が意味する人のためにO君は自宅とまったく同じ間取りの家を隣の敷地に建てました。

ただし左右が反転した間取りで、2軒の家はシンメトリーな対称形となっています。

一応、美的なものも考慮したいという建築士の習性は残っているようです。

工務店に渡した図面は自宅の図面を裏焼きにしただけのものです。

そこが私達に共通する「手抜き仕事万歳会」のメンバーたるゆえんです。

この夫婦二世帯住宅が表現するものは、やることなすことすべて反対、ということなのでしょう。

住所も表札の苗字も同じですから訪問客は少し戸惑うことになります。

間違った玄関の呼び鈴を押してしまうと「あらー、その方はお隣の人よ」と聞こえてきます。

一級建築漁師の自宅とは、やはり普通には無い一捻りが有るものなんですね。