あなたが入ったのはY市の桜の名所に新しく出来たばかりの特養だったね。
いろんな施設を巡って其処にたどり着いたんだったね。
入所したときはもう桜のシーズンは終わっていたけれど、来年はきっとテラスから綺麗な桜が眺められると僕は思っていたんだよ。
するとあなたは部屋の天井に星を散りばめてくれと言ったんだよ。
僕はあなたの欲することは何でも叶えてあげたかったけれど、星を散りばめるのはさすがに出来ないと思ったんだ。
するとあなたは夜の消灯後に天井でキラキラ光る物を貼り付けてくださいと言ったんだ。
僕は夜光性のステッカーを買ってきて天井にたくさん貼り付けたんだ。
あなたはもう寝返りも打てない体になっていて、長い夜を天井を見つめ続けるしかなかったからね。
翌日あなたは僕の顔を見るなり、良く光ったよと礼を言ってくれたんだ。
あのステッカーは百均で買ってきた物でまだたくさん余っているんだよ。
たったの百円だったんだよ。
あなたは満面の笑みを浮かべて喜んでくれたんだよ・・・
たったの百円だったのに・・・
あんた泣いているんか?
人生で一度も泣いたことの無かったあんたが
ハハハ、泣いてる振りをしているだけさ
泣いてなんかいないさ