米農家?のhさんが消毒用機械を「観てくれ」と言うので観てきた。
しかし、どうやら、
観るのではなく診るべきだったようなので、あらためて診てきた。
前回修理したお茶刈り自走機と同様にこの消毒機械も年長選手だ。
お茶刈り自走機はそれなりに使用感のあるものだったが、この消毒機械は過保護に生きてきたことが感じられる、新品同様綺麗に保たれた状態だった。
hさんの機械への接し方がよくわかる。
これは田んぼの稲や茶畑を消毒するための自走式エンジン噴霧器のようだ。
hさんの耕作規模なら背負い式の動力噴霧器で十分ではないのかな?、と思う気持ちは表に出さず、
「何か不具合でも有るのですか?」
ヒューズが飛んだらしい。
え”っ、「ヒューズって電気のヒューズ?」
見るとアンテナが付いている。
ははーん、無線リモコン式なんだ。
ドラムにはホースが100メートルも巻かれているという。
離れた場所からリモコン操作が出来るようになっているらしい。
飛んだヒューズはホースを巻き取る指令回路だ。
一応、らしき部分を診てみるが、らしき原因は何も見つからなかった。
30年も経つとヒューズは飛んでもおかしくない、そうでなければ5年に一度エレベーターのヒューズを替えてきた私の人生は無意味なものになる。
ついでに各部を診てみるが何も悪いところは無い、あと30年使えますよ。
「ところで、これいくらしたの?」
30年前に80万円だったのを大幅値引きで買ったそうです、私はまだ40前の頃か、
当時世間では農薬の使用に否定的な風潮盛んな頃で農機具屋は早くショールームから消したかったようだ。
う~ん、古いノートンやトライアンフが買えたんじゃないの?
ぼくそっちの方が観たかったなあ。
hさんの倉庫に置いといたら永久に劣化はしないみたいだし。
農機具屋のショールームに有っても不思議はない状態。
ホースが100メートルも巻かれた回転ドラム。
動力はガソリンエンジンで出力は4.3(6.2)PS
ポンプ駆動はVベルト2本掛け、走行とドラム駆動はVベルト1本掛け。
離れた場所から操作するため無線リモコンを使い電気式アクチュエーターでドラムのVベルトを張ったり緩めたりする。
走行タイヤは新品同様、軽トラに載せるときだけしか自走しない。
念のため電気回路も確認しておいたが何も問題なし。
診た結果は・・・どこにも悪いところなど無いですよ〜。
hさんはこのように新品同様に保たれた農業機械をいくつも持っている。
「見事に手入れがされていますね」そう言うと、
磨いてるだけだよ、そう言って謙遜する。
磨き上げるのはhさんの楽しみでもあるのだろう。
hさんの作る米が磨き上げられた美味しい米だと皆が認める秘密がここにある。
次に何を診るのか私も楽しみだ。
妻が何かの用事で田舎に来たときhさんの軽トラで駅まで送ってもらったことが有った。
そのあとで「hさんって優しい人だね」と言ったのを覚えている。
妻はまだ周囲からは元気に見えたときだったが、hさんは妻の何らかの変調を敏感に感じ取って接してくれたようだった。
まったくhさんほど優しい人はいない、人に対しても機械に対してもその優しさは同じなんだろう。
実は私は今オートバイに乗って走っているだろう?
そのはずだ。
妻との思い出の場所へ向かって走っているはずだ、息子達と一緒に。
たぶん「暑い暑い」とヘルメットの中でぶつぶつ言っているんだろう。
跨がっているオートバイは私が生まれた頃に製造されたノートン・マンクス350レーサーである。とんでもない嘘です。
レンタルしてきた最新のホンダGB350であろうと思われます。
排気量とエンジン形式は同じだが、70年も昔のノートンマンクスの評価のほうがはるかに高いのは人類の常識?です。
おそらく今乗っているホンダのオートバイが朽ち果てて土に帰った後も、ノートンの方は残っているでしょう。
しかし私はこのホンダのオートバイも好きになり始めたころ、なのかも知れません。
そんな予感が今?しているのです。
前を行く次男が乗った同じホンダGB350の後ろを走りながら、単気筒特有の一発〃の鼓動を感じ取ろうとしていように思います。
hさんのように敏感に感じ取れているのでしょうか?
9年ぶりに跨がったオートバイで何処へ向かっているのかは秘密です。
其処は妻と私が自分たちの運命を受け入れた場所だったはずです。
あのときの気持ちと同じものを感じ取ることが出来たなら、
改めて日記に書くのかも知れません。





