コンビニ対面の空き地にプレハブ小屋が出来て多くの人が出入りしている。

いったいなんやろ。

聞くと座っているだけで健康になるという電気椅子の無料体験をやっている。

ジムに来ているヒロちゃんがもう何回も体験していて、

「とても良いからあんたも行っておいで」

そう言われたので体験してきた。

前情報として聞いていたのが、

・ただ座っているだけという高齢者対応マシンである。

・睡眠や便通が良くなるそうだ。

・客が効果を認めてくれて、電気椅子が欲しくなった場合には販売もしてくれるが非常に高価らしい(百万円とか。ハハ、それが目的やんか)。

・敷地借用料や電気代など、この会場の運営経費は月数十万もかかるので大変らしい。

・この場所での無料体験会はもうすぐ終了予定だが、来場者が増えた場合は延長することもあるらしい。

・多くの人に紹介していただいて新しい来場者を増やしてくださいと言われた。

そんなことを運営者は客に言っているそうだ。

見え見えのインチキ商売やな、お金持ってる高齢者からむしり取るやつやんか。

そう思ってもそれは口に出さず、とにかく体験してみるのも良いではないかと行ってきた。

たくさんの車が駐車場に止まっていた。

時間を区切って入れ替え制で無料体験会をやっているようだ。

50分の体験を日に10回くらい繰り返しているようだ。

次の開始時間までに間があったので周りを偵察してみると、

会場はプレハブハウスで引き込み電源は仮説の小容量、トイレも仮説である、経費は月3~4万ってとこかな?。

舗装されていないが駐車場は結構広い(ずっと空き地やったでな)。

時間になったので入場すると若い男がすり寄ってきた。

『初めての方ですね、議員さんですか?』

「本官は○○署の警官であります」

すると特等席?と思われる演壇から隠れることの出来ない一番前の席に案内してくれた。

『内部は撮影しないでくださいね』とも言われた。

見渡すと30人ぐらいが電気コードの付いた座布団が敷かれた椅子に座って恍惚となっている。

酸素吸入を併用している席もある。

電気椅子は一日中ずっと作動しているみたいだ、せいぜい数十ワットやな、もっと低いかも。

口達者な青年が二人で交互にしゃべりまくってくれる。

初めてなのは私1人で、何かと言葉を投げてきて構ってくれる。

手帳のような紙を持ってきて手を乗せて「効果を実感してください」と言う、

手帳に手を乗せるとブルブルと波動のようなものを確かに感じた。

ああ、これにやられるんだな。

私はこの装置のメカニズムを知りたかったのだが、一切それには触れられない。

仕方無く装置の心臓部だろうと思われるオシロスコープのような波形が表示されている箱をいじっていたら「装置は触らないようおねがいします」、つまんないの。

青年二人は常連と思われる客に「何々さん、いままでにどこが良くなってきましたか?」

そんな掛け合いをしながら客を洗脳していく。

そして時間終了間際に、

『これは病気を治す機械ではありません、病気にならない体を作る機械です』

それも怪しい、なんせ座ってるだけやでな。

『この体験を続けたいと遠くから来ていただいてる人がたくさんいます』

年寄りは基本的に暇やでな、わしもやけど。

『もう少し増やしていただかないと、本部が此処から撤退させようとしています、助けてください』

知らんがや、あんたらの評価が落ちようがどうなろうが。

『お願いです、お友達をもっともっと連れてきてください』

お友達少ないでのう。

そして洗脳タイムは終わって青年はカードを渡してくれた。

2~3人に見せて貰ったら、あんたら本当に暇なんやなあ、数十回もスタンプ押されてて真っ赤っかやがな。

『是非次も来て下さいね、体験を重ねるほどに効果がでますから』

「体が軽くなったみたいです、署の連中にも是非体験するように言っときますわ」

良い体験だったなあ、ある意味。

こういうのに高齢者は騙されるのかねえ、信じられない世の中だわ。

私も無垢でピュアな心を持ちたいもんじゃ。

翌日ジムで逢ったヒロちゃんに、「良かったわ~」。

横でO女史が「あんたが怖いわ」。

いやいや、真実を語って高齢者から楽しみを奪ったらあかんて。

みんな掛け合い漫才楽しみにして来ているんだから。

手玉に取られとるんはあの青年の方なんやで。

印鑑の入った金庫の鍵は絶対渡さないんだって。

病気は気からってね。

なあヒロちゃん?

「アタリマエダノ・・・」

ハイハイ、分かった分かった。

いまどき田舎で情弱ビジネスやろうなんて無謀だって。

ハハハ