実は飛騨への山菜採り行にハエが一匹同行した。
ハエは自分の意思によって車に乗り込んだのか、空気の流れによって押し込まれてしまったのか不詳だ。
とにかく一匹のハエが車内に入って私達と一緒に飛騨の山中に運ばれてしまった。
私は早いうちに外に出て行った方がハエの身のためだと思い窓を少し空けておいた。
常に存在していた外界への脱出チャンスを自らの意思で拒否したかのようにハエは私達と共に私達の目的地まで来てしまった。
私の住む山中と飛騨の山中は同じ山中同士だと捉えては間違いである。
実際、運転を人に任せて居眠りをしながら着いた飛騨の山中は路側にまだ雪が残っていた。
ハエの好む20~25度の温度環境はハエが生まれた私の山中より飛騨の山中では少なくなってしまうだろう。
ハエにとって厳しい環境になるのは確実だ。
このハエが1ヶ月の寿命のどのあたりにあるハエなのか不詳であるが、生まれた場所に戻る事はもう不可能になった。
もし鳥のように帰巣本能が有ったとしても350キロの距離を飛んで戻ることは残りのハエの人生の全てを費やしても無理であろう。
残念だがこのハエは不慣れな環境の元で短い人生を終えることになるだろう。
政井みねさんの悲劇のように。
ここで私は自分の人生を振り返ってみる。
過去何回引っ越しをしたのか指折り数えてみると・・・10回だな。
業務上の理由が多くて自分の意思によるものは3回だ。
この引っ越し回数が多いのか少ないのか私は分からないが、その都度生活環境は変わっていたのは事実で有る。
少なくとも今こうして生きているのだから死ぬか生きるかのきわどい環境には遭遇しなかったのではないか・・・そうとは思えないな。
まあええわ、もう済んでしまったことだから。
あれから時間も経つが、あのハエは飛騨の山中で生きているかいな。
続く・・まだかい