中学の同級生k君。

一万本のトウモロコシを作って社会に貢献していた。

過去形なのは今年から作れなくなって、人にトウモロコシ作りを代わってもらったから。

一万本は作るのも大変であろうが、それを売ることもなく人にあげ切るのはものすごく大変なことだろう。

1本が400gくらいとして、皮が被ってれば500g、一万本は5トンにもなる。

軽トラに過積載しても10回以上は運ばなければならないだろう。

いったいどこへ置いてくるんだろう?

残った茎や葉っぱなどの残さ物はその10倍くらい発生するんじゃないか。

k君がどんな苦労をして社会に貢献してきたのか、詳しい話はまだ聞いていないので分からない。

二十年ほど前に高速道路がこの地に延伸してきたとき、k君の田んぼがインターチェンジの予定地になってしまった。

その頃のk君はまだ元気一杯で米作りをしていた。

インターチェンジに田んぼを盗られてしまうとk君の仕事は奪われてしまう。

買収交渉に応じないでいたが、民営化されて初の開通区間であったこともあり高速道路会社も引けなかった。

k君はふんばり続けていたが、計画が無くなると困ると地元の人にも説得されてついに応じることにした。

k君は田んぼを失い国は金を得た。

心ない人達はk君のことをゴネて大金を貰ったんだろうと噂したようだ。

k君は残った田んぼで米作りをあきらめてトウモロコシを作り始める。

収穫した一万本のトウモロコシはすべて地域の人にタダで分け与えてきた。

そんな心根のやさしいk君を二度の脳梗塞が襲い、体はいうことを効かず言葉はろれつが回らなくなった。

ついにトウモロコシ作りもあきらめて、人に代わって作ってもらうことにしたそうだ。

毎朝ジムに一番乗りしてリハビリに励んでいるk君の姿を見ると、私は、私は・・・。

「地球を救う飲み会に来ないかい?」

そう誘った私に『イジャニ・サケヲ・トメ・ダ・デ・テ・シマタ』

そう言って苦しそうな表情で笑おうとした。

私が山のススキを見ていた窓の教室からこんな立派な人が育っていたのか。

僕たちは本当に地球を救えるのかもしれない。