ラヂオ鳴ったよ
「やったー、嬉しいな」
玉音放送聞いとったとこや
「戦争終わったん?」
終わったよ
「どこで戦争しとったんやろ僕も行きたかったな」
何処に居ても戦場に居るみたいなもんやろが
「そうかもしれませんね、生きるか死ぬかの毎日ですから」
あんた時々まともな回路も作動するんやな
もう1台は生き返らんかったわ
「畑に埋めといてもあかんかったん?」
うん、育たんかったな
「1台有ったらええわ、美空ひばり聞けるよね?」
もちろん!
七欧通信機製。
5球スーパー+マジックアイの6球。
真空管の内側を良く観察するとあまり使われていなかったようだ。
出力トランスとスピーカーはもう1台からの移植になった。
配線も良質の物のようで弾力性も残ってる。
コンデンサ類は変えておいてやろう。
次の時代まで生き延びれるだろう。
似た名前の会社が今も有って関係があるのか知らないが代表の挨拶がメチャ面白い。
マジックアイはHALの目玉みたい。
受信強度が視覚的に見える真空管、横にしてキャビネット前面に目玉が出る。
耳の遠い人には良いアイデア、って耳の遠い人はラジオ聴かんか。
シャープ(早川電機工業)製。
こちらの劣化は先のものより酷い。
B電源巻線断線、配線被覆劣化、電解コンデンサー全滅。
製造年は七欧通信機製と同じ頃だが品質は劣るようだ。
特に配線被覆の劣化は手で触るとボロボロと落ちてしまう。
ビニール樹脂というものが出始めた頃で耐久性については未知数で試行錯誤中だったのだろう。
余った真空管は私が貰っておこう。
ST管(だるま管)と呼ばれMT管(ミニチュア管)が広く普及する前の代物、零戦の無線もこれだったのかな?
真空管はその性質上歪みとして耳につきやすい奇数次の高調波が少ない。
真空管で作られた回路は「奇数次高調波歪み」を打ち消すように働きます。
そのせいかな?独特の懐かしい昭和の音になるのは。



