母は生前家の周りの草取りをするとき、虫眼鏡を使わないと見えないような小さな草まで取って「めぼまで取っててんてんにしてきた」と言って満足していた。
私はそれを笑っていたものだが、実は今それとよく似た事をやっている。
家の周りに敷かれた砂利の中に紛れ込んでいるゴミを取っているのだ。
砂利は砕かれた安いもの(砕石)が敷き詰められているのだが、元々地球誕生の頃から有った悠久の時を経た石を砕いたものだから尊敬の念をもっている。
でもゴミは人工的な事由によって発生したプラスチックやコンクリ片であって、そんな物が石と同列に有ることが許せないのだ。
私は砂利と砂利の間に紛れ込んでいる小さな人工物を親の敵のごとく見つけ出しては取り除いている。やがて虫眼鏡も使うことになるだろう。
この村のダム湖上流に堆積している玉砂利を県が業者に払い下げて採取させている。
放置しておくとダム湖の底に堆積し続け貯水量が減ってしまう、防災機能が低下するし発電容量も低下する。
業者に採取させるのは県にとっても業者にとってもメリットが有るWin-Winの良い関係で結構、などと私はまったく思っていない。
玉砂利は元々山に有った岩が侵食され永い時間をかけて流れ転がり角が取れ丸くなったものだ。
するとその石の所有権は元々山であったはずだ。
県が勝手に石の処遇を決めるのはちょっと違うのではないか。
まあそんな生物も生まれていなかった何十億年も昔のことをどうのこうの言うつもりは無い。
県は現在河川にある砂利を自分の所有物であり責任も負っていると認識して、上手い具合に処理出来たと溜飲を下げているのだろう。
業者も防災面で社会のお役に立ち発電量も増やしてあげたと、恩着せがましい勘違いまでしているのだろう。
おまえらなあ。
そんなことを言うのは入札会場地下の談合部屋でだけにしとけ。
地元はめちゃくちゃ迷惑しとるんやで。
ひっきりなしに走るダンプカーで年寄りは怖くて道もおちおち歩けないんやぞ。
それが道路工事の影響で迂回路になっている私の家の前を走り回っているんじゃ。
私は生まれる前から土建屋は大嫌いなんじゃ。
何の技術も必要としないじゃり屋が川からさらってダンプに満載して走り回っていて静かな環境が蹂躙されてるんじゃ。
特にこの村はじゃり屋が一杯生息していて困ったもんだ、首長もじゃり屋の一人だ、まるでじゃりじゃり村じゃ。
悠久の時間が作り上げた珠玉の玉砂利でゲスな商売をするんじゃないよ。
昔は川原から拾い上げてきて神様に捧げていた代物なんだぞ。
どこへ持って行くんやその玉砂利を、有益な公共工事なんかに使えへんのやろ。
「社長!いい玉砂利が盗れましたぜ、社長んとこの庭に一杯どうでっか」
そんなところやろが。
私の家の前に少々こぼしていかんかい。