銃のことを書いたけれど私も銃を持ちたいと思ったことが有った。

勤め出して直ぐの頃10歳ほど年上の先輩が狩猟を趣味にしていて、私の田舎に山鳥撃ちに来たことがあった。

良く訓練されたセッター犬を乗用車のトランクに閉じ込めて野に放つ、犬は山鳥が隠れて居る場所の手前で身を伏せて動かなくなる、主人に獲物がいることを教えてくれるのだ。

主人が号令を掛けると犬は獲物を追い立てて飛び立たせる、パンパンと乾いた散弾銃の音が轟いたが弾は当たらず鳥は逃げていった。

犬は又、振り出しに戻って鳥を探り始める。

主人とゲームを楽しむかのように、リードするのは犬の方なのだ。

面白いな。

私もやってみたいと思ったけれど犬も車も鉄砲も無いから実現へのハードルは高くやがて忘れてしまった。

田舎に戻ってきて職猟師の話を聞くと中々大変、血なまぐさい仕事だ。

猪や鹿が相手となると犬と死に物狂いの死闘になってしまう。

早く撃たないと犬を殺されてしまうと焦って撃ち損なったり、本当に犬を殺されてしまったこともあるそうだ。

撃ち殺した獲物の解体作業は血にまみれた難儀な作業だ。

気が乗らないときは山に穴を掘って埋めてきてしまうそうだ。

ゲーム感覚ではできないのが実際の生き物の殺生というものだろう。

おびただしい血の海が狂った戦場でもない日常生活の場に現れる。

ニワトリを絞めたときには予想外に大量の温かい血が出てきて怯えた。

血は見たくないな。

採血室で抜かれた自分の血を見つめながら改めてそう思った。

赤は危険を感じる色だ。

そーだったのか。

わざと、外したのかも知れないな。