大きなコンバインだ、人が小さく見える。
今頃コンバイン?といぶかるだろうが収穫しているのは米ではない。
麦の収穫だ。
この地域の農家が国の「中山間地域等直説支払制度」による交付金を受けていることは前に書いた。
山間地で傾斜度がきつい不利な農地の可哀相な農家をはげまして?米作りを持続させようという狙いだ。
広義には国の食料政策の一環であり、狭義には地元農民を縛る為の都合良い五人組制度である。
雀の涙ほどの交付金を受けているが為に足腰立たなくなっても農民は米を作り続けざるを得ない。
それでも物理的に無理なモンは無理であるから、農家?は人に作ってもらうか請負会社と契約して米作りを投げることになる。
そこで国はいつも自分がやっていることなど棚に上げて「米作りの丸投げはいかんよ」と交付金をケチろうとしてきた。
この制度は20年前より5年を事業単位として過去4期続いてきて今年から第5期がスタートする。
その5期目に入って国は丸投げ農家をふるい落とそうとしてきたのだ。
米作りを人にやってもらっている農家は多く私の田舎の家もそうだ。
そこで自治体(村役場の産業課)は「丸投げではないという覚え書き」を請負会社と取り交わすように指導してきた。
役場が作った素案に基づいて個々の農家は請負会社と覚え書きを交わす運びとなった。
要約すると土地の維持に関する出費や水利管理については土地所有者が行なうとして丸投げでは無い体裁をこしらえた。
元々、請負会社との契約は貸し賃の設定も無く”好き勝手に作って穫っていって頂戴”という内容であり、
土地所有者にとって何もうま味の無いものだったのに加えて今後は荒れた土地の修復義務も負うことになる。
請負会社側も美味しい仕事でないことは明らか、
初期の頃は一反あたり一俵の米を借り賃の意味で支払ってくれていたが今はそれも出ない、どころか、
米では手間が掛かって採算が取れない為に最近は麦を作っている。
麦は、種だけ撒いておけば刈り取り時期まで放置しておける。
本業が別に有る請負会社はそちらがひまになったときに農作業にやってくる。
「何時刈り取りにくるんだろう?」と皆が心配していたところへ、大きなコンバインがやってきてササッと終わって帰っていったのだ。
花器 銘:小麦色の器
Kenichi Museum

