私達はゼネコンのことを”組”と呼んでいた。
「何処の組のもんじゃー」の組と同じ呼び方だが、それと一緒ではないし私も集落の組長であるから別段呼び方に悪意は無い。
しかしゼネコンの中には「何処の組のもんじゃー」よりも社会に適合していない組も有るのは事実。
業界のピラミッド構造は長い歴史の中で元請けが一番偉く下請けはゴミクズの意識を生んでしまった。
対等であるはずの請負契約はしばしば上位の者から下位の者へと蹂躙されていき、利益は搾取され権利は踏みにじられる。
多数の底辺が一握りの頂点を支える業界の構造が動物と同じような弱肉強食の世界を可能にしてしまった。
元請けには施主から支払われる金と下請けからむしり取る金の両方向からの金が集まる。
矛盾しているようだが、下請けに支払われるべき金が支払われず、泣き寝入りの下請けは更に下請けへと泣き寝入りを強要しどんどん下っていき最後にもう下が無いどん詰まりで精算される。
そのようなやり口は歴史上延々と繰り返し行われてきて、その度に「次は埋め合わせするからね」と、お決まりの約束事も延々と反故にされ続けてきた。
そんな前世紀のような世界が現世に有るはずがないだろうと思うかもしれないが、ついこの前も福島の除染作業で行われていた。
汚染土を削って袋に詰めて積上げるだけの単純作業にスーパーゼネコンが乗り出してきて国からの特別危険手当は放射能を食べた作業員には渡らずどこかへ消え去った。
正に「何処の組のもんじゃー」も顔負けの悪業がまかり通っているのがゼネコンの実態である。
ならばどうして建設業に携わる人が多いのかと不思議に思うだろう、「やめて別の仕事すれば良いじゃん」と。
ところが美味しいことも有るのだ。
組下(ゼネコンの下請け)仕事ばかりが建設業者の仕事ではない、「この仕事は貴方にやって欲しいな~」と、施主が直に指名してくることが有る。
すると金の流れはゼネコンを経由しないのでガッポリ儲かることになる。
その様な形での工事を「分離発注・別途工事」と言ってゼネコンは金のことに口出しできなくなる、何せ施主様の意向なのだから。
ゼネコンは悔しいから色々嫌がらせをしてくるが法治国家であるから知らんぷりを決め込めば良い(法外な歩金の要求等)。
http://www.kenchikuyogo.com/513-fu/055-bukin.html
エレベーターは特殊機械のためにこのような受注形態は多い。
施主は●菱が良いとか●芝が良いとか(何処も一緒なんだけどね)好みで指名してくる。
ゼネコンに半値七掛け三割引の二束三文で買いたたかれることを思えば出血サービスしても儲かる。
スーパーゼネコンともなると大変に垢抜けて紳士的な対応をしてくれるが「何処の組のもんじゃー」の体臭は完全には抜けきっていない。
小さな工務店が個人のマイホームを建てるような形が最も自然で発注者も受注者も双方が満足出来ることになるように思う。
しかしスーパーゼネコンでなければ出来ない仕事も多々有るのでそれは認めておかなければならない
近所の工務店で「原発作ってくれない?」と言ってもオヤジがテレビから目を離さないのは原発反対だから、ではない。