次なるドキュメント
私の精神はコントロール出来る限界に近かった。
目覚めたときの憂鬱感は生半可なレベルではなかった。
眠りから覚めて、夢ではない現実を知ったときその憂鬱感は襲ってくる。
どうやっても防げない心のメカニズムの暴走である。
直ぐにキッチンに走って酒を手に取る。
襲ってくる憂鬱感をアルコールで緩和させる。
一口飲む、二口飲む、三口飲む、とりあえず落ち着く。
後で襲ってくるより痛烈な、対処法を無くした憂鬱感を知りながら飲まずにはいられなかった。
2016年12月3日
自暴自棄になっていた私は”何かの変化を起こしたくて”唯一の楽しみであったバイクを手放した。
もう二度と楽しむことは無いだろう・・と。
妻は死を覚悟しても尚冷静であり、精神はいたって正常を保っていた。
残された時間を十分に楽しもうとしていた。
ハロウィンにはディズニーランドへ、友人に車椅子を押してもらって行ってきた。
私が連れて行ってやれれば良かったと思うが、私にはその行動力はとても無かった。
新幹線ホームで迎えた私は付き添ってくれた友人の笑みの中に疲れを読み取ろうとしたが、
満面の笑みの中にその色は無かった、何と強い人であることか。
妻は間髪入れず「今度はハウステンボスに行きたい」と言う。
私は妻の心理が理解できず「そんなに困らせないでくれ」と思った。
しかし妻は言いだしたことは引っ込めない。
二日目に息子たちが一足早く帰ってしまった後、
石畳の上で車椅子を押しながら、私は「本当に妻は楽しいのだろうか?」と、
考えずにはいられなかった。



