現在進行形

 妻との会話が困難になってきた。

もともと私は口数が少ない方で色々としゃべって妻からYES or NOだけを引き出すという芸当ができない。

妻の意思表示には文字盤を使用するが、どの文字を指しているのかが解らなくなってきたのだ。

動かせる左手人差し指は真っ直ぐ伸ばせなくなっており、又、ブルブル震えてピンポイントで文字を指せないのだ。

文字盤はひらがな50音が並んでいるタイプで、たとえば「す」を指そうとしたとすると、さ行「す」付近をふらふらと動き回り、さ行「し」・「す」・「せ」と左右列のか行「き」・「く」・「け」、た行「ち」・「つ」・「て」の9文字の中の一つだろうくらいの大雑把な読み取りしかできない。

次に「き」付近を指すと同様に「か」「き」「く」「あ」「い」「う」「さ」「し」「す」9文字のいずれかかになり、私が本命と思われる、『「す」「き」』、ですか?と聞いてみる、違っていると9×9=81種類の組み合わせから探らなければならない。たった2文字でもこうである。

複雑な話をしようとすると天文学的組み合わせと忍耐を要することになる。

何か良い方法がないものかと思っている。