院内ドッジボール大会がありました、毎年の恒例らしい。
1階住人だけの催しです。
他階の様子は分かりません、謎のままです。
患者を2つに分けて、体育館(有るんですヨ)に集合。
Aチームは同室O氏、Bチームは私が監督になる。
あらためて見廻すと戦力と非戦力が一目瞭然です。
運動は無理でしょうって感じの人も随分と多いのです。
一応は、皆に聞いてみる。
「試合に出たい人は手を挙げて~」
「は~い」「ほ~い」「へーい」「うぎゃー」、ひょえ~連られて全員が手を挙げた。
勝ちを狙うO氏に対して、此方は全員出場が使命となった。
戦力風な人を入れておいて片っ端から選手交代、
楽しそうじゃないか、玉砕までに何とか全員出場できた。
皆勝敗なんか関係なし、幼稚園のお遊戯のように嬉々として逃げ回っていました。
楽園の人々の喜怒哀楽表現は素直です。
体感することを素直に喜んだり悲しんだり怒ったりと、まるで子供のようです。
複雑な頭を更にややこしくかき混ぜ直したりはしません。
中には娑婆で価値観に苦しみ、達観した心境の人もいるのでしょう、クスリも効いてますが。
素直な良い子達の中にいて、私は少し後ろめたいような気分になってきました。
私にとってこの楽園はいろんな体験が出来て有難いことなのですが、
どうも長く居続けるのは申し訳無いような気分に襲われました。
思い始めると雪崩になるのが私の性分、
卒業しよう。
女房殿と相談、ドクターに話す。

「そろそろ娑婆に出て奉仕活動でもやろうかと、はい」
Dr
「そうなの~、奥様はどう思います?」
女房殿
「そうね、もう少し入ってたほうが良いわね」

「え”っ・・」
Dr
「もう少し治療しときましょうかね・・看護婦さ~ん」

「ひょ、ひょえ~」

更に2週間囚われていたのだよ、消毒用ALC飲んで。

おしまい