暫くサボっておりまして・・へへ
少しばかり後味の悪いことの告白。
社会に適合出来ないことを病気とするならこの少年もそうだった。
N市の病院に入っていたそうだが好転しないらしく、
その病院で紹介され此処に転院してきた。
親はこの楽園に希望を託してすがるような気持で息子を連れてきたのだ。
大切に育てた息子であろうことは接する態度が物語っていた。
父親の傍に寄り添い大人しくしていた少年だが、直ぐ化けの皮がはがれた。
皆に深々と会釈をして父親が帰っていくと途端に豹変した。
盲目の父親には見えぬ荒れた風貌に似合った素行の悪さなのだ。
根性焼き跡の汚い手足を振り回しては周りの人に暴力を向ける。
病だと判断されて間違いの無い行動である。
私達狂人は心の中に共通の思いを秘めながら乱暴者の少年を観ていたのです。
事件は誰かが防衛の為に始めたことだったように思い出す。
未成年には用がない筈の喫煙ルームの静寂が乱された。
居合わせた者は胸に仕舞っていた思いを発散させてしまったのです。
屈強な農耕族が暴れる少年を床に組み伏せ皆が周りを取り囲む。
少年の声は押しつけられたタオルに消され、じたばたもがくエネルギーは有効に作用しない。
とても永い時間、その状態は維持され続け少年はもはや暴れなくなった。
彼にとっては初めての屈辱だったかもしれない。
誰とも知れずに言い出したのが
”家の方向に頭を向けろ”
”親の愛情が伝わってくるだろう”
”父ちゃんに謝れ”
”ごめんなさいをしろ”
”謝れ”
”頭を下げろ”
少年は気の良い狂人達の執拗な要求を拒み続けていたが、
やがて・・
涙を流しながら嗚咽とともに家族の居る方向に頭を垂れた。
少年が流す涙にはやるせない真実も紛れているのでしょう、
荒んだ私生活では経験し得なかった本来の感情が戻ったのでしょうか。
親の前で大人しくしていた少年は家庭で暴力を振るったことは無いはずです。
病気の状態にまで変化してしまった心の培養地は家庭の外だったのでしょう。
その場に居合わせた者はおぼろげながらもそれを感知したのです。
その後の少年がどのようになったのか知らない、
流した涙のように澄んだ心に戻ってくれていれば良いが。
盲目の父親への気持ちが先立ち人にあるまじき行動に走ってしまった私達です、
狂った者に違い無い、ごめんなさい。
精神の病は社会と共にその様相が変化していくのでしょう、
 

ならば社会が生んだ病気は何処を治療すればよいというのか。