温暖化の進行は生態系に大きな変化をもたらしている。
あのうるさかったアブラゼミは既に絶滅して今ではクマゼミに取って代わられたようだ。
夏の風物?とも思っていた蚊は水中から大気中に羽化したとたんに蒸発して消えてしまう。
植物界の年間サイクルも年々前倒しされていくようだ。
桜の開花時期は入学式には既に卒業式を終えている。
A朗さんは田んぼの畦草刈りが一巡し、最初に刈った場所に戻ってきたとき草は又適度に伸びていて、結果、夏の間中延々と草刈りをするというのが例年の日課であったが、今年は最初の場所に戻ってきたとき草は伸び過ぎていて既に刈り時を逸してしまっていた。
草の生長速度に合わせて自分の仕事の速度を増加させることは77歳のA朗さんには無理な話だ。
温暖化は人間に敗北を認めさせることになってしまった。
そんな中でもこの花は正確に時を刻み続け、必ず秋の彼岸に開花を迎える。
仏様の花は人間を裏切らないようだ。
母が田んぼの畦に彼岸花の球根を植えて見事な景観を見せてくれたことがあった。
母にそのような花を愛でる女性らしい心があったことに私は少々驚かされた。
この花はアルカロイド毒を含有し、食した場合彼岸に逝ってしまうとの意味もその名前にはあるという。
その毒性ゆえに田んぼの畦に好んで植えられミミズやモグラなど小動物を寄りつかなくし、畦に穴を開けられることを防いできたそうだ。
昔の人は上手く自然を利用したものだ。
何だ、そうだったのか、母はその教えに忠実に事を行なっただけで、花を楽しむ訳ではなく稲の生育の方に心を馳せていたのか。
当地では昔この彼岸花の球根を食べていたと教えられた。
水にさらして毒を抜いていたそうな、何と恐ろしい。
貧しかったんだなあ。
曼珠沙華(赤い花)という意味だそう。
白い曼珠沙華もある、笑々。