ヴォルフスブルク vs ハンブルガーSV は、0-1でヴォルフスブルクが負けてしまった。

こういう時のニュース記事ってのはさみしいもんで、どこを見ても5、6行しかなかったりする。

それも、ページ半分に写真が載せてあって、そこで折り返しての5、6行、みたいな。

さみしい。

さみしすぎるぞ、ヴォルフスブルク。


とは言うものの、そう言う私も実はこれまでヴォルフスブルクの試合はあまり見てこなかったので、偉そうなことは言えない。

なんであまり見なかったのかというと・・・。



長谷部のプレーが、見てても全然おもしろくなかったからなんだよね。



かつてヴォルフスブルクが優勝したとき、たしかに長谷部はそこにいた。

でも、あの優勝は、グラフィッチやジェコやミシモビッチが活躍したからこその優勝って感じで、「長谷部がいたから優勝した」という印象は、個人的には全くなかった。

それどころか、あの頃の長谷部を見ていると、日本人にありがちな遠慮がちなプレーも多々あったりして、見ていてフラストレーションがたまってしまうことさえ多かったのだ。

だから私はヴォルフスブルクの試合はだんだん見る気がしなくなっていってしまった。



が、しかし。

それまでの気持ちとは違い、今回のハンブルガーSV戦を私は楽しみに待ちわびていた。

一体なぜなんだろうか?



そう、それはおそらく、優勝したアジアカップでの長谷部の大覚醒を見てしまったから!



自分でもそれ以外に理由が思い当たらない。

そこへ持ってきて、ヴォルフスブルクは監督が交替してのリトバルスキー監督の初陣だという。

その影響だろうか?

ここんとこほとんど試合に出ることのなかった長谷部がスタメン起用されることに!

なんとまあ、いいタイミングだこと。

アジアカップでの好調そのままに、長谷部のプレーを楽しむことができるんじゃないか。

そう私は思ったのだ。



で、実際に試合が終わってみると、ヴォルフスブルクは0-1で敗戦・・・。

たしかに、負けは負けだし、ニュース記事の扱いが小さいのは仕方のないことだ。

だけどだぞ。



この試合の長谷部は決して小さな存在ではなかったはずだ!



少なくとも、写真で折り返して5、6行で形容し終えるようなちっぽけなプレーはしていなかったことだけは間違いない。

いや。

むしろ私は感動してしまった。

0-1で敗戦して感動?

そう、たしかに0-1は0-1だし、敗戦は敗戦。

しかし、内容的に完敗だったかと言われれば、そんなことは全くない。

断じてない。

むしろ、その内容に私は注目したい。



テレビの解説でも何度かコメントがあったが、チーム状況はまさに最悪だそうで、チームワークもなにもあったもんじゃないらしい。

実際、FWグラフィッチなどは決めるべき決定的チャンスをハズすわハズすわ。

そんな状況の中、我らが日本代表キャプテン、長谷部の存在感はどうだ。

他の選手がみな個人プレーにはしりがちで、勝手にドリブルしてはボールを失うというシーンが多い中・・・。



わずかな攻撃チャンスにおいて、その起点になっていたのは長谷部だったんじゃないだろうか。



そういういうシーンが何度もあった。

そして、そんな中での極めつけが、あのシーン。

そう、この日最大のチャンスだったと言っても過言ではない、あのシーン。



右サイドでボールを受けた長谷部のスーパークロスから、李忠成(リ タダナリ)ばりの超ドフリーで待ち受けていたグラフィッチの頭にドンピシャヘッド!



・・・になるはずだったんだよなー。

なのに、なぜポシャる、グラフィッチよ?

小学生でももうちょっとマシなヘディングができそうなもんだが。



そして同じく右からの長谷部のスーパークロスから、中央で待ち受けていた、韓国代表MF具滋哲(ク ジャチョル)!



決めろよ。

て言うか、打てよ、具滋哲(ク ジャチョル)。

アジアカップでの得点王はどこへいってしまったのか。

この2つが決まっていたら、引き分けは当然、もしかしたら勢いで逆転だってあったかもな、ヴォルフスブルク。


まあでも過ぎたことをグダグダ言ってもしかたがない。

いや、むしろ、そんな勝敗以上に収穫があったことを前向きに捉えるべきだと思うのだ。



それこそが、先のスーパークロスを含めての、長谷部の激変したプレースタイル!



あるいは、プレー意識といったほうが正しいだろうか。

個人的な印象で言えば、この日の長谷部には、ヴォルフスブルクが優勝した頃の、まだドイツに来て初々しかった長谷部の姿は無くなっていた。

そう、この日の姿は、アジアカップで見たキャプテン長谷部の姿そのもの。

それもだぞ。

周囲は年下だらけの日本人ではない。

長谷部以上に年齢も実績もあるヨーロッパや南米の選手ばかりなのだ。

そんな中で、もっとも落ちついて状況判断をしていたのが長谷部。

そして、イライラを募らせることなく、チームを引っ張っていこうという意識を存分に出していたのが長谷部。

唯一の失点となるきっかけとなったPKを取られたときに、レフェリーに抗議しにいったのも長谷部だけだ。



あの、ヴォルフスブルクでは遠慮がちにプレーしていた長谷部が、こんなにリーダーシップをもつまでにプレー意識を激変させるとは!



そこに私は感動してしまった。

いや、たしかにまだまだ控えめな部分もあることはある。

ヨルダン戦やシリア戦のときのように、難しいダイレクトでのミドルシュートをバンバン放つような積極性はこの日はなかったのはたしか。

それでも、日本代表キャプテン長谷部のキャプテンシーが、わずかではあってもこのヴォルフスブルクでも発揮されていたことが私にはうれしい。



長谷部は覚醒した!



私はそう思い初めている。

いいのだ。

今はまだ覚醒中なんだから、そんな突然、雨あられのようにシュートをうつ必要はない。

この日のように、自らが中心となって「オレが試合を決める!」というスタンスが垣ま見えただけで、十分収穫。



思えば、今の日本代表には強気な発言をする選手が多くなったものだ。

日本人なのに。

長友にしろ、香川にしろ、岡崎にしろ、川島にしろ、李忠成にしろ、若い選手たちの日本人離れした強気な発言が目立つ。

そしてその元祖と言えるのが本田圭佑。

全てはここからスタートしてるんだろうな、きっと。

なにしろ、ワールドカップ中に「オレはマイケル・ジャクソンを超える」とか言ってたらしいし。

そのメンタリティーはただものではない、というか、どうかしてる。

そして、その本田を筆頭とした生意気な若い選手たちを現時点で引っ張っているのが、キャプテン長谷部なのだ。

そう考えると、この日のリーダーシップくらい、当然と言えば当然。

これまでは「運動量」の選手という評され方が多い長谷部ではあったが、こういうプレーが続くなら、それも変わっていくに違いない。

遠藤のような「司令塔」とか、トゥーリオのような「リーダーシップ」とか、そういう表現をされるような日も来るんじゃないだろうか。



次の試合。

まさかとは思うが、長谷部を起用しないなんてことはないはずだ。

そんなことがあったら、いったいどこ見てんだって話だぜ、リトバルスキー監督。

長谷部自身とチームの激変していく様を楽しむことにしよう。



長谷部のスーパークロスから・・・。



グラフィッチが合わせそこねて・・・。



こぼれたところを具滋哲(ク ジャチョル)!



なーんてシーンもありかもね。

フフフ。

期待したい。