性犯罪に及んだ人は、また性犯罪に及びたくなりますし、
薬物に手を出した人は、また薬物に手を出したくなります。
ギャンブルやアルコールも同様です。

こうした不幸の連鎖を止めたければ、まずは、
不幸への加速度を下げなければなりません。

週に5回もギャンブルに手を出していた人が、
週に4回に抑えられたなら、これはこれで良いことでしょう。
そうして4回が3回になり、3回が2回になり、
2回が1回になり、やがてやらなくなる、

「ローマは一日にして成らず」同様に、
「善い精神は一日にして成らず」です。

悪に染まるのは一瞬ですが、善い方向へはなかなか進みません。
これまで犯罪に手を染めてきた人が、急に心を入れ替えて、
明日からは善人として生きていく、というのは不可能です。

不幸の種を1000回蒔いたなら、
幸せの種を1回蒔いても、幸せにはなれません。
まだ不幸の芽が999回残っているからです。
それでも不幸を999回に減らすことはできます。

千里の道も一歩“ずつ”です。その上、
目的地から逆方向に千里進んでしまったとなれば、
目的地までは二千里の道となります。

となれば二千里の道も一歩“ずつ”です。
過去は消えません。できることは、
せいぜい上書きすることだけです。

不幸の種を1000回蒔いてしまったなら、
幸せの種を2000回蒔くことです。
罪の種を1000回蒔いてしまったなら、
償いの種を2000回蒔くことです。

どれだけ過ちを犯しても、それを上回ることをすれば、
いくらでも挽回はできますが、過ちを犯せば犯すほど、
這い上がるために必要な努力量は増えていくのです。

(完)