はじめ「あの・・・・」

 

 ???「どうした?」

 

はじめ「何で付いてくるんですか?」

 

はじめが自殺しようとした廃ビルからその外人はずっと付いてきているのだ。

まるではじめをまた自殺させない様ように見張っているようだ。

 

???「自殺させないため」

 

はじめの予想が的中した。女の出来損ないのようなものなのに、女の勘はよく当たる。

そう、彼女は自嘲気味に思った。そしてもうひとつ、思ったことがある。

 

はじめ「貴方のお名前は?」

 

???「・・・・・・・」

 

その人(?)は少し黙って、それから顔を上げてこういった。おおよそ彼に当てはまらない

名前を。

 

ガブリエル「・・・・・・・ガブリエル。名前はガブリエルだ」

 

はじめはその名前を2、3回、口の中で反芻した。ガブリエルとは、天使の名前だ。

あまりにも似合わないその名前に少しだけ吹き出した。

 

はじめ「ガブリエル・・・・似合わないね」

 

そして、ガブリエルの方を向くと、いつの間にかいなくなっていた。もしかすると、

名前を似合わないと言ったことに怒ったのだろうか。それでも、また会える気がする。

きっと、今日は遅くまで外出していたので、ひどく殴られるかもしれない。

それでも、彼にまた会えるなら、死ぬのを先延ばしでいいかも。

 

はじめ「もしかしたら、ホントに神の使いだったのかも?」

 

馬鹿げたことを考えながら、自分の家に帰った。あれほど帰りたくない家に。

ガブリエルにまた会ってみたいという興味の入り混じった願いは、すぐにでも叶ったのだ。

 

はじめ「きゃあ!!」

 

干からびた両親の遺体と、奥から聞こえるテレビの音。それからはじめは、大体のことを

把握した。