ウンガロ俳句会

ウンガロ俳句会

ブログの説明を入力します。

①波静かごろりと二人梅雨の星
②ほぇほぇと島の鳥鳴く五月闇
③川沿いに紫薔薇と五代様
④いしだんの百合清しまた一歩
⑤八重山は光り眩しき薄暑かな
⑥俳友と三坪の店で藁鰹
⑦墓掃除汗拭く母の手を取りて
⑧悪太郎掬ふ金魚にこんぱちし
⑨梅雨の夕西門からの光射す
⑩木漏れ日の松林行く道をしへ
11風薫る鳥居の先に海遥か
12鳥居より内に紫陽花咲きほこる
久保田です。

私が 二票×3、一票×3
で選句するのはとても僭越なことですので
別の見方もある 
という程度にお考えください。

みなさんのことを十分に知らない状況ですので
塩梅、さじ加減が分からないのですが
少し辛口気味です。

私の理解が不足している場合や
みなさんがよくご存じのことを言っている
こともあると思いますが
お許しください。

全体としては 素直な分かりやすいよい句や
感性豊かな目の付け所のよい句
が多いという第一印象です。

それではひとつずつコメントしてみます。


①夜濯ぎやワイキキ透かす雫かな

とてもよい発想の句ですが
残念ながら2カ所に詠嘆が入っています。
俳句での代表的な詠嘆は3つ
「や」「かな」「けり」ですが
我々のレベルではひとつだけがよいとされています。

草田男の句に
降る雪や明治は遠くなりにけり
という有名な句があり
上五と下五にこの切れ字が入っています。

絶対ダメというわけではありませんが
我々はひとつだけの方がよいと思います。

これは季重なりも同じで
絶対ダメではありませんが
季語はひとつだけの方が
無難です。我々は。

また、「雫」はこれで正しいのですが
元々は雨のしずく からきた字で
見た目の印象もあるので「滴」でも
よいかもしれません。


② 箱入りのトマト売り出し開店待ち

下六になっており、リズムもあまりよくありません。
字余りなら上五と言われています。

また、やや散文的で
箱入りのトマトの売り出しなので開店待ちです
という文を適当に抜いた ような感じです。

擬人法の、句またがりの破調ですが

開店を待つ箱入りのトマトかな
開店を待つや箱入りトマトかな
開店を待つは箱入りトマトかな

あたりでどうでしょうか。


③新緑や風の通りが見える庭

なかなか爽やか句です。
俳句では 見える 聞こえる などは
あまり使わない方がよいとされています。
敢えて使う場合ももちろんありますが。

また、「が」は濁音であり、説明的になる場合も多く
あまり使わない方がよいと思います。
「の」に替えても成立します。

日常会話では「風通り」がいいとか悪いとか
使いますが、
風の通り というと少し違和感もあります。

新緑や狭庭に風の通り道
新緑や狭庭の風の通り道

前者は 通り道(がある、ができた、を感じる 等々)
後者は 体言止め

狭庭 は俳句ではよく出てくる
拙宅の狭い庭 というようなニュアンスです。


④ サナギ割れ優雅な舞の揚羽蝶

季語 揚羽蝶 には大きな羽でゆったりと
優雅に舞う イメージがすでにあり
夏井先生が仰るように季語の力を信じるならば
優雅な舞の は季語の説明であって
不要かもしれません。

また、サナギが羽化して蝶になるのは
卵の殻を割って雛が出てくるイメージではなく
脱皮をするような感じだと思います。
YouTubeなどには感動的な映像も
いくつかあるようですが
割れる は少し違和感があります。


⑤風死すや草払ひ機の音止まず

夏の暑苦しさが伝わってきます。
草刈り のことを 草払い ともいうようなので
問題ではありませんが草払い機はネットにもありませんでした。
刈払い機 は広辞苑に掲載されていました。
ただ、草刈機 は季語なので(大歳時記)
季重なりということになります。
上五で詠嘆しているので
風死す が主季語ということになると思います。


⑥洗ひ髪私のままのグレイヘア

中七がなかなか面白いと思いました。


⑦ 御仏前想い出多き水羊羹

下六になっているので少しリズムが
悪いかなと感じました。

俳句は詠み手(作者)と読み手(鑑賞者)
によって成立する文芸なので
あいまいさを残して読み手にまかせる
というのは悪いことではなく
モノに語らせる ということでよいのですが
それならば
御仏前の水羊羹
というモノになります。

中七で 思い出多き と説明しているので
(説明はあまりしない方がよい)
故人(誰?)が好きだったのか
作者が昔から御仏前にいつも水羊羹が
あったことを懐かしく思っているのか
句意がよく分かりませんでした。


⑧アジサイの花と待つ家帰郷の子

アジサイの学名はOtaksa hydrangea で
シーボルトの側にいた日本人 おたきさん
からだそうですが、俳句では漢字の
紫陽花 の方がよいと思います。

季語 紫陽花 の子季語に 四葩(よひら)、
四葩の花 がありますが 
紫陽花の花 とは言いません。


⑨ 側溝の梅花藻ゆらす水迅し

きれいな句だと思います。
米原市醒井の地蔵川でしょうか


⑩退院の明日を想ひて夏の天

快癒して明日退院する という喜びが
伝わってきます。


11鳴神の脚の速きよ奥琵琶湖

歌舞伎の人気演目も意識した季語だと思います。
雷鳴が聞こえてきそうです。


12夕涼み湖を眺める父の背よ

悪くはないのですが、もう少し
何か情報があればいいのかな
と思います。
例えば、事実と異なるかもしれませんが
「父」が「考(ちち)」となるだけでも
印象が変わります。
もちろん 「眺めし」と替えなければ
ならないかもしれませんが。


13夏の湖水光先に伊吹山

大自然の奥行きのある情景ですね。
水光先に 水光先の 
どちらも成立すると思います。
追う目の動きとスピードが少し
違いますが。


14万緑や亡き人愛でし鳰の海

鳰の海 は琵琶湖の別称ですね。
亡き人 の情報をもう少し入れても
よいかなと感じました。


15 誰も居ぬ梅雨明けを待つベンチかな

中七下五で 誰も居ない と言わなくても
分かるので、上五は無い方がよいと思います。

句またがりの破調になりますが
梅雨明けを待つ○○○○○ベンチかな
梅雨明けを待つ○○○○○○○ベンチ

例えば
梅雨明けを待つ空五倍子(うつぶし)色のベンチ
ちょっと暗すぎるかもしれませんね。


以上です
ということで

◎ 9、10、11
○ 1、6、13

としました。
宜しくお願いします。