今月はかなりレベルが高く
良い句ばかりです。
季語+12音あるいは
12音+季語の基本形が多くあります。
①連獅子の初舞台なり秋月夜
八代目 市川新之助(勸玄くん)のことだと思います。もう 11歳だそうで、そんなに時が経ったのか と感じます。いわゆる時事俳句ということになります。詠むことは問題ないのですが、例えば十年後、数十年後にこの 17音を読んだときわかるかどうかということです。そういう意味では時事俳句は難しいですね。
②縞薄生けて出を待つサンルーム
「月」とは書いていませんが、そうであることはすぐわかります。十三夜か満月か十六夜かと想像してしまいます。季語ではないですが「サンルーム」との取り合わせも面白いと思います。
③ 木枯や笑むは子安の立木仏
近くの猪名川 東光寺なのか、あるいは四国中央市光明寺など全国に600体程残っているそうですね。季語 木枯との取り合わせも良いと思います。一般名詞なら 木枯し あるいは
木枯らし ですが、季語の場合、一般的に送り仮名は付けませんのでこれが正しいです。季語+12音 の基本形であり、笑む との対比も面白いです。
④ 七五三手を取り渡る右左
横断歩道 とは書いてなくても、少し交通量のある道路を横断する様子がよくわかります。可愛らしい風景です。季語+12音 の基本形ですね。
語順を替えて
右左手を取り渡る七五三
とすると上五中七まで読んでも、何かよくわからず、下五の答えを見て なるほど、と納得する面白い俳句になるかもしれません。
⑤ 木犀の風のかたまり居間抜ける
木犀 というと銀木犀を指す場合もあるそうですね。風のかたまり という表現も面白いです。このままでも十分成立しますが、散文的な雰囲気を避けるために、下五は 抜ける居間 でもいいかもしれません。また上五も 木犀や で切れをいれてもよいと思います。ただ、以前にもよく似た発想の句がありました。
⑥数珠玉を道々集め近江の子
行く春を近江の人と惜しみける
という芭蕉の句を思い出しました。
このままでもかまいませんが
上五を 数珠玉や として切れを入れて
集め を 集む と古語にした方が
なお一層雰囲気がよくなるかもしれません。
⑦ 朝雨の上がりて凛と帰り花
とても良い句ですが
朝雨に傘いらず
朝雨馬に鞍置け
朝雨は女の腕まくり
などと朝雨はすぐ上がるとされているので
「上がりて」は予定調和でむしろ不要かもしれません。
また「朝時雨」は冬の季語ですが
「帰り花」という立派な季語があるので、季重なり とまでは言えません。
⑧ きのう今日ゆず味噌のせて白ごはん
柚子 は秋の季語ですが 柚子味噌 は
新年の季語になります。
このままだと 白ごはん が主役で最後の映像として残り、また散文的でもあるので、語順を替えた方がよいかもしれません。
例えば
白ご飯柚子味噌のせる昨日今日
柚子味噌やご飯のお供きのう今日
等々