バックミラー一杯に広がる奴 | ポカポカの思いつき日記

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日常生活で思いついたことや思っていることを書き残すメモに近いブログ。

私の幼なじみにA君というのがいるのだが、こいつは典型的な関西人らしく、常に勝か負けかにこだわる奴であり、また集中力が凄い奴であった。

こいつとは小学校から高校まで同じだったのだが、こいつは高校まで真面目な優等生であり私とはそれほど仲良くは無かった。

こいつと仲良くなったのは高校卒業後、こいつが狂ったようにバイクにはまり出してからだ。高校卒業後、何があったのか分からないが急にバイクにはまり出し、狂ったようにバイクに乗り出した。

こいつが最初に乗ったバイクというのがホンダのTL125というのだが、元々の集中力が凄いので買ったばかりのバイクはトライアルの練習のためすぐにボロボロになった。またバイクだけでなく、こいつの家の前にある公園内の石で出来たベンチもトライアルの練習台に使われてすぐにボロボロになった。

もっと凄いのは、こいつは峠の走りでこのTL125でとてつもない技を編み出したことだ。

バイク乗りなら分かると思うが、一般的なコーナーの曲がり方は、コーナー直前まで突っ込んで行き、コーナー直前に前ブレーキのフルブレーキングでスピードを殺し、高速シフトダウン後、アクセル一定のままコーナーに入り、コーナリング中のスピード調整はリアブレーキで調整を行いつつ、視線はコーナー出口を見続けて曲がって行き、コーナー出口の立ち上がりでちょっと半クラを当ててフル加速する、というのが普通の人の走りだと思う。

しかしこのA君は違ったのである。彼は、普通の曲がりの中で、コーナー立ち上がりの時間を早くするため、コーナー出口が見えた瞬間に軽く逆ハンを切ることを編み出したのである。そうすることで立ち上がり加速する時間が早まり、立ち上がりでは無敵を誇るようになったのである。

バイクでまっすぐ走っていて急にハンドルだけを右に切った場合バイクは左に倒れる。その逆もしかりである。つまりこの現象を彼はコーナリング中に取り入れたのである。

このテクニックをマスターした彼はトライアルバイクにも関わらず峠が早かった。特にコーナー立ち上がりからの立ち上がりはどのバイクにも負けなかった。いつしか彼の趣味はコーナー立ち上がりでビックバイクのバックミラー一杯にに広がり、”俺はいつでも抜けるぜ”と余裕を見せることになった。

しかしながらこのA君の走りは常に危険と隣合わせであった。なんせコーナリング中に逆ハンを切るのである。切り過ぎれば、即転倒である。実際良く彼は転倒した。彼のお陰で楽しいツーリングが駄目になったことは1回や2回ではない。救急車にも付き添いのために同乗させられたこともある。

社会人になっても彼の過剰な走りは相変わらずで、何度も事故を犯し、一度は入院までしている。

そんな彼も家庭人となってからはバイクからは身を引き、今はその集中力を仕事に向けているようである。それはそれでいいのだが、彼のことを良く知っている私としては余り仕事ばかりに集中しないことを心よりり願う次第である。