初めての乳腺外科、しこりが腫瘍と分かった日の記録。


母乳外来から乳腺外科を勧められ、その日の内に予約のとれた乳腺外科へ。

上の子2人は在宅勤務の夫に預け、まだ授乳中の娘を連れて出発。
車で50分程車

病院到着!
検査着に着替えるけれど、授乳中なので検査前までブラはそのまま。

まずはエコーから。
「健康診断でエコーしたことないですか?全体的にしこりありますね。」

「したと思うんですけど、妊娠が分かる直前で、その健康診断から1年半位前は経ってます。」

「授乳してると張ってるだけだって思っちゃいますもんね。」
等、他愛ない話。

笑っているけど、やっぱり不安で、
「正直に聞きますけど、不味い感じですか?」

「…私は医師じゃないから、これ見て診察はできないんです。
このエコー写真とかを診て先生がお話してくれますよ。
マンモグラフィは母乳が出るからしないです。」

両胸みるが、メインは右胸でじっくりと。
腕をあげて脇の下までエコー。

待合室で待つ間、不安が募る。
泣いて抱きついている娘を抱き締める。

暫くして診察室に案内され、男性の先生が、

「これね、腫瘍だね」
「…あっ」
私?と自分で自分の右胸を指す。

先生が頷く。

「これ?腫瘍?」と自分の右胸を指す。

先生が頷く。

涙出てきた。

やばい、どうしよう。
腫瘍って癌って事?、このしこり相当大きいし、全体的にあるし、治療、抗がん剤、髪抜けて…いや、髪抜けるとかそんなんじゃなくて、こども達どうする?
お母さんいなくなるのか?
夫は仕事しながらで3人どうするの?
実家は遠くて頼れない。コロナあるし無理。
そもそも親に言える?いや、言えないわ。
親より先に死ぬの?親不孝じゃん…


先生は冷静に淡々と話をする。

事務的じゃなくて、冷静にひとつひとつ。その間、娘を強く抱き締めてた。

「良性ではないから。
悪性かもしれないし、ただの炎症かもしれない。
まずは今日、細胞をとって検査にまわしましょう。
検査してこの腫瘍が何なのか分かってから、治療方針を決めましょう。
抗がん剤を使うのか、炎症だったらお薬なのかとかね。」
「はい」
涙は出るけど、ここで泣いても仕方ないと思って一瞬堪えた。

「大丈夫?」 先生が目を見て確認する。
「はい」

よし、という感じで準備が始まる。
娘は看護師さんへ。即号泣。

看護師さんが、
「今日できるものはちゃちゃっとやってしまおう!それからよ!」
と、肩を叩いてくれた。涙が溢れた。

ベッドで横になる。
触診。
左は問題なさそう。
メインは右胸。

深く考えないように考えないように…
天井を見つめるしかできなかった。

先生がしこりの大きさを測ってる。
右下のが2.5cmっていうのは覚えてる。ヤバいじゃんって思った。
脇の下もエコーで診て、

「ここも転移してる可能性があるね」

と一言。

「脇の下と右胸の細胞を取ります。
脇の下は注射で、チクッとするからね。
胸の方はこれを使います。(道具を見せてくれた)
針が大きいので麻酔をします。
麻酔の注射がチクチクするからね。これ見て、音を聞いてね。
ガチンッ
細胞をとる時に音がするのと、多少衝撃があるから驚いて動かないようにね。
大丈夫?」

丁寧に説明してくれる。

頭もとで看護師さんが手を握ってくれた。恐くて恐くて強く握ったら、握り返してくれた。

「じゃあ始めるよ」
そう言われた瞬間、
「ううっ」…と大泣きしそうになる。

一瞬、堪えて、
「はい、お願いします。」

まずは穿刺(せんし)吸引細胞診。
脇の下、二回針刺し。
吸引する時、じわっとそこそこの痛みがあった。

次は針生検。
胸に局所麻酔をして、太い針で細胞を切り取る。
エコーで確認しながらガチンッ。
これを6回位だったかな、繰り返す。
衝撃はあるけど、麻酔があるから痛くはない。
針が大きいから血がすぐには止まらないみたいで、枕子(ちんし)というのでグッと押さえる。

処置が終わって、別病院でCTとMRIをとると説明を受ける。
早く、今週中にとりたいと伝えて予約してもらった。

「細胞の検査結果はどうしても時間がかかります。
他の検査結果が揃うのも待って、次回は2週間後に話をしましょう。」

涙に鼻水、止めどなく出てくるけど、先生とはちゃんと話できたと思う。
最寄りの乳腺外科は初診が最短で1週間後だった事を伝えると、

「そこまで待ってられないよね、心配だったよね」
と苦笑いで言ってくれた。
「遠いけど、うちに来てくれて良かったよ。
他に聞きたいことある?」

1番聞きたかった事
「私は死ぬんですか?」

喉まででかかった。
けど、結果も出ていない。
この質問は無駄だと思って聞けなかった。

「太い針を指しているので、右胸での授乳は避けるようしてください。
今日はお風呂も入らないでね。」

痛み止めと抗生剤をもらい、駐車場で夫に電話する。
腫瘍だった事、検査をした事、追加の検査結果をみて治療方針を決める事を伝える。
「そっか…
でもまだ分からないんだよね?
とりあえず検査してからだね。」

ショックだっただろうな。
「何かごめんね」
「何が?何がごめんなの?」
「そうね、とりあえず車でおっぱいやってから帰るね」
車の中で授乳しながら、何を考えていたのかは思い出せない。
泣いていたのは覚えてる。

帰りは泣きながら、でも冷静になりながらハンドルを握ってた。

家に着いて、玄関の鍵を開けようとしたけど、涙が溢れて止まらなくて、暫く扉は開けられなかった。

深呼吸して、ガチャッと扉を開けた瞬間、2番目が満面の笑みで
「おかあさーん!」
と走ってきた。
1番目も
「お片付けしたよー!」
と待っていてくれた。

ふたりが、
「お母さん、おっぱい大丈夫?痛いの?」と聞いてくる。

笑いながらも涙が出てきて、
「うーん、ちょっとねー、頑張らないといけないんだ。」

不安そうな顔したふたりがしがみついてきて、苦しくなった。
夫が少し話をしていたみたいで、お母さんが病気かもしれないから、みんなできることは自分でしましょう!お手伝いもやりましょう!と話をしたらしい。
長女は腕にしがみつくし、長男は抱き締めてくれる。
それから引っ切り無しにふたりが話しかけてきた。

ふたりが落ち着いた頃、夫と話をする。
泣いて謝る私を見て、

「ごめんねとかじゃないから」
と涙を堪えながら抱き締めてくれた。

「まだ結果が出てないから治療方針とか話はしていないけど、今はまだネガティブな考え方が強い事を分かって欲しいんだよね」

「分かってるよ、分かるよ、頑張ろう、全力でサポートするから」
と自分に言い聞かせるように励ましてくれた。
一番近くにいる人がこの人でよかったと思った。

結果まで2週間かかる。
夫はサポートと気持ちの面から、結果が出るまで仕事を休むと、別室で上司に電話。
扉の向こうで鼻をすする音が聞こえた。

部屋から出てきた夫は泣いてた。
部屋の前で待ち構えていた私が苦笑いすると夫も苦笑いしてた。

この日の夜はほとんど眠れなかった。