全米で約3千万人が見る公開オーディション番組「アメリカン・アイドル」の5シーズン目のファイナルが5月24日、グラミー賞などの会場にもなるハリウッドのコダック・シアターで行われた。

 優勝者の本命はロサンゼルスでミュージカル女優をしているキャサリン・マクフィー(22才)で、審査員の間では今までの応募者の中で最も歌の才能があると言われていた。ところがフタを開けてみれば優勝をかっさらったのは番組史上最年長 の「シルバーフォックス」ことテイラー・ヒックス(29才)だった。

 南部アラバマ出身で垢抜けないテイラーは、メジャーデビューを目指して何年も地元のナイトクラブで歌っていたという。今回、念願のレコード契約も獲得し、ショーではデビュー曲を披露した。彼も言った通り、これぞアメリカンドリームであろう。

 この番組の噂を聞いた私はフォックス・ジャパンで放映が始まったので期待して見たが、あまりに下手な参加者が多く、アメリカ人にはありがちなのだが、異常に自信過剰、酷評されると今度は汚い言葉で負け惜しみ。注視に耐えないのでしばらく見なかったが20人ぐらいに絞られた頃からかなりグレードが高くなったので毎週楽しみにするようになった。

 優勝は視聴者からの電話によって決定されるが、6千340万件を超える投票があり、これは大統領選挙の投票数を上回る数だったというからすごい。


 この番組に出ればCDセールスも増えるというので積極的に出場する有名歌手も多い。ファイナルにもプリンス、アル・ジャロー、メアリー・J・ブライジ、トニー・ブラクストン、ミートローフといった豪華なゲスト陣が顔を揃えて度肝を抜かれた。

 この番組の売りの1つはサイモン・コーウェルというイギリス人のプロデューサー」である。歯に衣着せぬ批評で毎回ブーイングが起こる。憎まれ役だが、実は歌はどうでもいいから彼のコメントが聞きたいというファンもいるのだ。歯の浮くようなお世辞よりよっぽど気持ちがいい。それに、テイラーの踊りがひどいとか歌が安っぽいと辛らつな批評をしていたが実力がわかるときちんと評価するフェアな人間性を持っている。

 2002年以来の優勝者と準優勝者のレコードセールスは低迷する音楽業界で合計3300万枚を超えるなど、アメリカのアマチュアのレベルの高さ、音楽ファン層の厚さを見せつけられる思いである。

 アメリカンアイドル軍団のツアーが始まり、アメリカのチケット業者のHPで既にチケット販売が始まっている。どれぐらいレベルが高いか、ニューヨークで見られるのであれば是非見てみたいものだ。