学生の時のサークルに草刈正雄の物まねがうまい新人が入って来た事がきっかけだと記憶している。
彼は普段の飲み会でこの芸を披露していた。
サークルは児童文学を対象としたサークルである。普段は自作の品評、テーマごとの討議、作家研究が主体であり、先輩方は合宿でも同じ事をしていた。
私が2年の時留年した先輩以外は、例え上級生でもすべて同輩となってしまった。

合宿の時に何の芸ができるかという話になった。
酔うと中国語と韓国語の2カ国語漫才をする上級生、欄間にぶら下がってナマケモノのものまね、身体障害者のまね、やくざのおどし、ウミガメの産卵等各自がいろいろと考えた。
合宿の最後の夜は男女分かれて自分たちが作った作品を舞台化し出発表会を行った。
とどのつまりは自主制作の映画であった。
春先に信州で合宿をしていた後輩達に、映画を作る事と文学の関係を、訳の分からない講釈をして無理矢理に演技をさせた。
でも完成した映画にはみんな感動していた。なかなかの名作といまでも思っている。

私が皆に話していた事は、「学生の時に芸の一つも出来ないと、社会人になって何かやらされた時、対応できずに上司から評価を受けられない事は避けるべきである。」という内容である。
正しい考え方かどうかはわからないが、他の学校との交流の時の二次会では、他校を圧倒していたことは事実である。
文学にはエンターテイメントは欠かせない要素といまでも思っている。

さて、私の芸は少ししかない。
トドの昼寝、化粧の仕草、間接外し程度しかない。
蝉という芸は頭の中では出来ているのだが、まだやった事がない。
人生で一度はやってみたいが、よほどの場でないと受け入れてもらえないように思う。