咲パパ は ためらう様子もなく、ゆっくり・・・そう、ゆっくりと話し始めた。

そして、 その空気につられてか・・・ 一言も逃さないように聞きに入る


咲パパ

 ・・・隼人くんに、咲が昔から頭痛に悩まされている事を聞いた時に とても不安な気持ちになった。

そう、それは・・・今から16年前の事だった。

私と妻の間に咲が身ごもり、何事もなく無事に産まれた。そして新居も建て、仕事も軌道に乗っており、私たち夫婦は とても幸せだった。 

だが、そんな幸せな一時は長くは続かなかった・・・。

妻が病に倒れたのだ。 

長年に渡って 頭痛に悩まされていた妻は、病院に検査を依頼した。

そして、いろいろと検査を進めていくにつれて ある特殊な病気であることがわかったのだ。

  その病とは・・・

  脳の一部が委縮してしまい、最後には壊死してしまうという 恐ろしい病気だったのだ。

そして、当時の医学では その病気を治すことは まず不可能。

私は絶望した。

なんで・・・なんで 私の妻なんだ! やっとここまで辿り着いたのに・・・。 本当に神がいるのならば、私は神を恨む!! そして、妻が治るのであれば、私は神をも殺すであろう。 この肉体が滅びようとも・・・。

そう 心の中で 何度も何度も 叫んだ。叫び続けたんだ。

だが しかし、妻はそれを許さなかった。 そんな私の姿を見て、妻は入院での延命治療を拒絶したのだ。

妻は言った。

「私は、死を恐れてはいません。 それより、あなたの心がボロボロになる方が恐いわ・・・。 なので、延命治療を受けずに、自宅に帰ります!!」

それを聞いた私は泣いた。我を忘れ、一晩中泣き明かしたのだ。 心の整理をつけるため、そして、死にゆく妻と、咲のために・・・。 

そして、気持ちを落ち着かせて 妻に言った。

「これからは 私が責任を持って咲を育てる。だから、心配しないで ずっと 遠くから見守っていてくれ。 そして 私と君との一緒にいられる、残された あと僅かな時間を・・・ 大切に生きる。約束するよ。」

妻は微笑むだけで、それ以上は何も言わなかった。

そして数週間後のある日。 妻が私に囁くように言った・・・。

「私が愛した人が あなたで よかった。 本当に・・・本当に幸せでした。 あなたになら、安心して咲を任せられるわ・・・。 あなたと咲を残して、先に逝ってしまう私を どうか許してくださいね・・・・。」
 
妻は満面の笑みを浮かべながら 一粒の涙を流し、静かに息を引き取ったのだった・・・。



それから咲と二人で暮らし始めたが、咲は母を亡くしたショックからか・・・私以外の人には 誰にも心を開かなかったのだ。 だが、何年か経った ある日、を公園に連れていった時のこと。

一人の少年が砂場で遊んでいた。 その少年は 咲と私に気がつくと、トコトコと歩いて近寄ってきたのだ。

そして 咲の前まで来ると、その少年は右手を差し伸べて、咲に 満面の笑みで笑いかけた。

その笑顔を見て、咲は 母の最期の笑み と重なったのであろうか、その少年に 自分も右手を差し伸べて 笑いかけたのだ。 そう、咲が少年に 心を開いた瞬間だった。 

私は驚いたよ。そして、今でも鮮明に覚えてる。 

そして、その少年が 君・・・隼人くんだね。 

もう、言わなくとも分かってるとは思うが、咲は・・・。妻と同じ病気だ。 どうやら遺伝らしい・・・。

診察が終わり、私が 担当の医師に 伝えられた時は・・・まさに絶望が再来したと思った・・・・が、しかし。

16年前とは違い、治療方法が 「開発」 された事を伝えられた。

その開発された方法とは、


その病は、人間の感情をつかさどる脳神経を破壊する病気であり、その神経を破壊される前に・・・・

   脳神経に 『artificial intelligence ( 人工知能 ) 』 搭載の チップで、カバーするというもの・・・。

だが、その方法で生きられたとしても・・・ これから咲の人生において、どんな影響、後遺症 があるかは まだハッキリとは分からないが・・・何らかの感情欠落は 間逃れないとのこと。 恋愛感情なんて持っての他らしい・・・。



正直、さすがの私も迷ったよ・・・。 それが咲にとって、本当にいいのかどうか・・・・。

だが、その話を・・・ 隣で 寝ているふりをして 咲は聞いていたのだ。

そして、 咲からこれまでの事、生きるためなら どんなことでも耐えられる決意、
全てを聞いた。

 隼人くんに告白された事も・・・。 そして、ちゃんと自分の口から答えを言ってないことも 全部・・・・。

私は、咲の意志を尊重し・・・手術を受けることに承諾したのだ。

そして 無事に手術が終わると 同時に・・・何故か すぐに隼人くんに伝えに行かなければいけない気持ちでいっぱいになり・・・隼人くんの病室に来たというわけだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


咲パパは 全てを 隼人に話した。



隼人 「・・・・・・・・そぅ・・・・・・ですか・・・・・・・・・・・。」

 僕は、衝撃が大き過ぎるあまりに・・・言葉につまる。

咲パパ 「今日はいきなり 話をし過ぎてしまったようだ・・・。すまない・・・。 咲がの目が覚めたら、一目 会いに行ってあげてくれ・・・。 また今度、ゆっくり話をしよう・・・。」

 そう言い残して 咲パパは屋上を後にしたのだった。

空からは ポツポツ と 冷たい雨が 降り始め、やがては大雨となった・・・。



隼人 「・・・・・・うあああああぁぁぁ!!!」


僕はあまりにも衝撃が大きくて・・・何が何だか理解できずに その場で 泣き叫んだ。 何度も、何度も、何度も・・・・・・。

現実は あまりにも残酷で・・・ この春先に降る 「大雨」 は・・・ 僕には あまりにも・・・冷たすぎた ・・・・・・・・。





第三章、、、完結

第四章へ続く ♪

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