★ドラマ「トッケビ」の時系列★
トッケビ(鬼)になってから・・・
数十年を外国で過ごし、其の後の数十年を韓国で暮らす。
此れを繰り返しながら、900年の長き時を生きてきた、シン。
1990年
シンが帰国する。
ウンタクが此の年の9月に生まれる。
シンが身籠っていた女性(ウンタク母)を助ける。
1998年9月13日
第一病院でウンタク母が死去。
2008年
シンと、高3になったウンタクが出会う。
(11月に実施される、修能(スヌン수능)とも、大修能(テスヌン대수능)とも云われる大学修学能力試験の前)
2008年時・・・
「939歳」と口にしていた、シン。
此のことから、シンが武人として生きていたのは、武臣政権以前と考えました。
幾星霜。
時は流れ、其処暮らす人変われども。
変わらぬものがある。
荒れた皇宮の片隅からでも見える。
其処守る様に聳える松岳山。
其の昔、此処は松嶽と呼ばれていた・・・。
一体、此処で・・・。
何を・・・。
此の男のために・・・。
寄る辺なき我が身。
此の高麗で無事でいられるのは、間違いなく此の男のおかげ。
希有な運命(さだめ)背負いし・・・二人の出逢い。
愛縁機縁。
そんな困(よすが)に縋り、私は此処で生きている。
確かに此処に存在している。
なのに・・・。
此処の者ではないと云う、凍える様な恐怖にも似た「孤独」。
其れを知るであろう、此の男。
思わず、此の躰ごと寄り掛かりたい衝動に駆られてしまう。
あの人に似た・・・大きな背中。
幾歳(いくとせ)時が流れても、尚も変わらずに芽吹く木々の枝葉から覗く西宮の屋根を目に、ふと・・・ウンスが漏らした言葉。
シンの耳は、彼女の声色から、得体の知れぬ何かを捉えてしまっていた。
だからなのか、何時もの様に軽口で、彼はウンスの言葉の深意を聞くことが出来ずにいた・・・。
遥か彼方の時の流れの先の、其の先から来たと言う、女人ウンス。
今、其の女人の口から放たれた、彼女にとっては独り言の様な言葉。
“・・・だったのね”
其の言葉の端の意味する、彼女にとっての過去は・・・。
即ち、シンにとっては・・・今だ来ぬ時の先・・・。
孤独には・・・慣れてきていた。
だが・・・。
「情」を感じた者達との別れ、其の「死」は未だ耐え難く。
「忘却」を得られぬ我が身には、其の数を重ねる毎に、此の胸を貫く剣の重みと痛みが・・・。
と、感じた刹那、嗚咽の様な「塊」が胸の中から突き上がる。
其れを抑え込める様に、また、其れを気づかれぬ様に、シンは振り向き様。
「お前。以前、内攻がどうのと、尋ねていたな。」
呆然とシンの背中を眺めていたウンスは、彼の言葉に「えッ」と小さな驚きの声をあげてしまう。
だが、次の瞬間、彼女は其の顔を覇すかに上げると、上目遣いになり、シンに、にじり寄りつつ。
「また、あんた。お前って。」
ウンスに迫られ、たじたじになりつつも、シンも返す言葉で。
「お、お前こそ。また。」
少し前かがみの姿勢になった、シン。
そんな彼と鼻を突き合わす程の距離に、詰め寄っていたウンス。
次に彼女の口から出たのは・・・。
「キムシンさん。貴男ね。男の癖に、何かと細かいのよ。嫌味たらしい時もあるし・・・。」
此のウンスの言葉に何かが触ったのか、次に、シンは大きな声で諌める様な言葉を口にしつつ、彼女を見据えていた。
「네이놈!(ネイノム) こ、細かいとは!」
シンの大きな声に、負けず劣らずな声でウンスもまた、言葉を返してしまう。
「はん!史劇言葉なんて使って。バッカじゃないの!」
馬鹿じゃないのと言葉を吐くと同時に、其の勢いの儘、顔を更に上げた格好のウンス。
彼女は、其れと同時に自分の乱れた髪を掻き上げた。
言葉を同じ様に勢いに任せた仕草のせいだったのか、または、此れ迄の疲れからだったのか、其の刹那、ウンスは軽い眩暈を感じ、思わずふらついてしまう。
ウンスの異変に逸早く気づいたシンは、素早く彼女の腰に其の長い腕を回すと、しっかりと彼女を其の胸の中へと・・・。
倒れてしまう、寸での所で、彼に抱きとめられ・・・シンの胸の中に顔を埋めた格好になってしまった、ウンス。
「・・・大丈夫か?」
そんな彼女の耳に、彼の心配気な低く優しい声。
「だ、大丈夫よ。少し眩暈が・・・。」
シンの声に反応したウンス。
彼女は、何故か彼の腕から逃れる仕草を見せてしまう。
そんなウンスに、シンは更に自分の腕に力を込め。
「何時だ?」
此の言葉に、思わず、シンの顔の方へと、自分の顔を目線を上げたウンス。
「え?」
何の事かと瞬間、其の表情を変えた彼女は、驚いた様な声を吐き出した。
彼女の驚いた声を耳にし、不安を見せた其の顔を見た刹那、シンはウンスの目をしっかりと見詰ていた。
「・・・毒だ。毒にあたったのは?」
「何故・・・わかったの?」
「はっきり分かったのは。今だ。」
西に陽(ひ)が傾き、東天の青空に満ちかけた月が顔を出していた。
珍しい事もあるものね。
何故か、そんな呑気な心持ちになっていた・・・。
摩訶不思議な力持つ高麗男に、手首を掴まれた儘、人気ない王都の街を歩いていた。
歩き行く道の其処彼処。
其れ等に見覚えがあるのか、無いのか・・・気にする余裕も・・・無いのは何故・・・と、ウンスは思っていた。
「お前の躰を治してやる。」
キムシンに、そう言われ連れて来られたのは、あの高麗ではウンスには縁の無かった道教寺院だった。
嘗ての高麗世家の典医寺には、道師や巫女がいたと云う。
だが、あの高麗では、典医寺の御医チャン・ビンが、道術や巫術(クッ)を嫌い、医術と其れを分けたからだと耳にしていた。
古い大きな堂宇立ち並ぶ寺院の一角。
小さな廟の中央に、一坪ほどの高床を拵えた場所で、ウンスは胡座の格好で、シンを待つよう指示された。
大きな無垢の松の柱の色が、此処に廟が創建されてからの年月を物語っていた。
「そう言えば・・・朝鮮は・・・国巫は道教の道士が・・・。」
思わずそう呟き、周りを見回してみる。
すると、廟の扉の横の窓に施された「彫」は、何処となく中原の佇まい。
「キムシンさんって・・・中原に修錬・・・まさか・・・江湖の・・・。」
トッケビにされた。
其の「功力」を、今後どうすればと、俺は密に悩んでいた。
其の為に、遥か西域を越え天竺まで。
其処で、己の内力の凄さを知ってしまう。
其れから、中原へと流れ来た。
流れ来た中原の宿楼の酒場で、蜀山での修行を終えた、仙術優れた一人の「英雄」と知り合った。
此れも奇縁と、其の直後、蜀山に入り、己の内力を制御する法を得た。
其処で、数多くの、内力優れ、また内攻著しい男達と知り合った。
そして、知った。
此の俺の此の「力」は「神力」であると・・・。
香の煙あがる香炉を手に、ふと、「トッケビ」にされてからの自分の過去を思い出しながら、シンはウンスの待つ廟へと向かっていた。
毒に侵され、気の乱れを見せる異界人。
解毒はされぬが、何故か其の症状を見せぬ、ウンスの躰。
此処への道すがら、俺の問いに答えた女人の言葉。
同種療法。飛蟲毒。
蟲毒の怖さは・・・。
猫で呪い、蟲で殺すとされる・・・中原の。
ウンスよ。
お前は笑うだろうが、俺は神だ。
香炉を手に、シンはゆっくりと廟の基壇の石段を一段、二段とあがっていった・・・。
★また長くなるので分けます。
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