数年前に話題になっていた本なのですが、気になってはいたものの、読んだことはなかったのです。
文庫本が出ていましたので、購入してみました。
『怖い絵』中野京子
この「怖い絵」が大変好評だったようで、続編もかなり出ています。
怖い絵大ヒットシリーズになってます。(角川から出ています)
2017年には「怖い絵展」という企画展もやったらしいです。
(知りませんでした)
では、さっそく読んでみました。
私はてっきり、見るからに異様な怖い絵を持ってきて、この描写は怖いですねぇ・・・って感じなのかと思っていたのです。
もちろん中にはそういう絵の紹介もあるのですが、それよりも一見怖くない絵のように見えて、実は・・・っていうものがかなり多かったです。
この本の中では、西洋絵画のみでした。アジアや日本、西洋以外の絵画は含まれていません。
中野京子さんは西洋の歴史にものすごく精通されていて、この絵の描かれた時代の背景やそこでの人々の営みの解説が素晴らしいのです。
で、それを知ってしまうと、
その絵がもう。。。。
怖いんです
・・・というか、えぐいエピソードがあるものをピックアップしているからそうなるのは当たり前ですが。
「マリー・アントワネット最後の肖像」ダヴィッド作
これが一番印象的でした。
中野さんはこのスケッチ画の作品を見て、この怖い絵を書こうと思いついたそうで、確かにそう思わせるインパクトがありました。
マリー・アントワネットの顛末・・・・・。
ギロチンにかけられる前、市内引き回しにあうマリーをスケッチしたもの。
これ、説明がないとこの人誰って感じ。
全然書き込んでいない、やる気のないスケッチで。
びっくりなのが、この作者のダヴィッドは、
あの「マラーの死」を描いた、ジャック・ルイ・ダヴィッドなのです
え!?おんなじ人なん!!っと思わず独り言いってしまいましたよ。
このジャックさんという作家は権力にすごくおもねる人で、状況が変われば、けろっと成功者にすりよっていく、ゲス野郎だったそうです。
私、「マラーの死」はとても素晴らしい静謐な描写で、感動してたんですけど・・・・。
感動、返して・・・。
ルイ・ダヴィッド、もっとも卑怯な人間のひとりであり、当時最大の画家のひとりでもある。革命のあいだ彼はもっとも騒がしく吠えたてる連中の仲間で、権力者が権力の座についている間はそれに仕え、危なくなると見捨てた。彼は死の床にあるマラーを描き、テルミドール八日にはロベスピエールに「ともに杯を傾け、飲み干そう」と崇高な誓いをしておきながら、ヒロイックな渇きをすぐに流し去り、家に身をひそめる方を選んだ。
と、まあ、こんな感じでいろいろな絵画の秘密?を解き明かして、びっくりするエピソードが続くんですが、
つくづく、絵描きというものは変人か気違いかゲス野郎だよなぁ・・・・としみじみ思いました。
それで、なんでそんな奴らが名作作るんだよと思った時に
はっと気付いたのですが、
みんな自分の欲望にばか正直なんです。
とんでもなかったり、人としてどうなのかというものだったり、
とにかく常軌を逸して、しかも周りの目、全然気にしていないんですよ。
このゲス野郎とののしられても、
ぶわ〜〜〜〜〜っと周りなんか吹っ飛ばす勢いで己の欲望につっぱしるこの作家たちが怖いやら、痛いやら、醜いやら・・・・・。
逆にあっぱれ!という気持ちもどこかにある。
アーティストになるということは、
ゲス野郎に積極的になりに突っ走るものなのだ。
困ったもんだ。。。。。。