黄金の幼年~幼少期。


私はアニメに夢中だった。


クリィミーマミに始まり、


忍者ハットリくん

パーマン

怪物くん

キャッツアイ

ドラゴンボール

ルパン三世

北斗の拳

…etc


どのアニメでも

主人公や主要人物になりきって

ごっこ遊びに日々明け暮れていた。



この、ごっこ遊び。


極めれば極めるほど

リアリティを追求したくなるわけだが、

そう言った意味でも

大事な役割を担うことになるのが

アイテムだ。


特に主要人物が

アイテムに頼りきっているような…

というか、

そもそもソレがなかったら

物語として成立すらしないような、

そんなタイプのアニメの場合、


物語の根幹となるそのアイテムの重要性は

言うまでもない。


そしてそんなタイプの

代表格とも言えるアニメが


藤子不二雄先生の傑作!


パーマンである。


パーマンにとっての重要なアイテム、


それすなわち

パーマン変身セット!


パーマンを語るうえで

このパーマンセットは

切っても切り離すことなど絶対にできない

必要不可欠なマストアイテムなのだ。




だってね、

もしもこれがなかったら…


主人公パーマン1号のミツ夫も

パーマン2号のブービーも

パー子のスミレちゃんも


ただのフツーな

人間なんだもの真顔

※ブービーはただのフツーな猿だけど



逆に言い換えると、


パーマン変身セット

さえあれば!


誰でも

パーマンに

なれてしまう


魔法のようなアイテムってわけ。



そんなの

欲しいに決まってる!真顔



だからいつの頃からか

私も、弟も

サンタさんへのお願いは


“パーマン変身セットがほしいです!

 パーマン変身セットをください!”


って、

もうそれしか言わなくなっていた。


その熱烈な想いがサンタさんに届いた

ある年の


クリスマス。


朝、目覚めると

憧れ続けた“パーマン変身セット”が


枕元に置かれていたのである。




まさにコレ↓



いや〜嬉しかったのなんのって!


そりゃもう大興奮!!


私はベッドから飛び起きると

早速、主張強めなそのヘルメットを

嬉々としてかぶり、

マントとパーマンバッジを装着した。


おぉ…!

力がみなぎってくる!!気がする



少し遅れて弟も

いそいそとパーマンになる為に

準備を始めた。


しばらくそれを客観的に見つめていたが


アニメで見るパーマンとは

なにかが少し違うような気が…


しないでもない真顔


まあでも、


小さなことは気にするな

それ ワカチコワカチコってな気分で、

その違和感は華麗にスルーした。


それにしてもモタモタと

変身に手間取っている弟。


私は待ちきれなくなり、


「…じゃ!先に行ってくるわ!ウインク


と言い残し、

颯爽と部屋を飛び出した。




私がパーマンに変身したら

まず最初にやりたかったこと。


それは


空を飛ぶこと!


そう、パーマンは軽やかに空を舞う。



パーマン パーマン パーマン

遠くで呼んでる声がする。

来てよ パーマン

僕のところへ

来てよ パーマン

私のところへ

こころ 伝える 合言葉

パーマン パーマン パーマン



私はパーマンのテーマソングを口ずさみながら

旅館の階段をかけ登った。


期待に胸を膨らませて。


旅館は4階建て。


屋上から飛んだら

さぞかし気持ちが良いだろうなぁ。


もうワクワクが止まらない。


縦横無尽に飛び回るその姿を

誰に見せようかな。


まずはお父さんとお母さん。


それから友だちの家にも行っちゃおうかな。


びっくりするだろうなぁニコニコ


ああ…!早く飛びたい!


早く飛びたい!


早く飛びたい!!



アドレナリンが炸裂している中、


ちょうど2階に差し掛かろうかという場所で



母と鉢合わせた。




「あ!パーマンになってるし〜目がハート

似合ってるよ。

サンタさんからのプレゼントかな?

で、どこ行くの?




すかさず母は訊いた。





「うん!サンタさんにもらったんだニコニコ

だから屋上行くの💕︎」





「……!?ポーンポーンポーン





「やっとパーマンになれたからね、

ちょっと

空とんでくる︎ニコニコ



ちょっとひとっ風呂浴びてくる

みたいなノリ。




「まっ…!待って。

分かった。

…うん。じゃあさ、

まずは

地面から飛んでみよっか!





「……え?…凝視





「地面から空を飛べたら

そしたら

屋上から飛んでもいいからニコニコ





「…え〜凝視めんどくさ

せっかくここまで来たのに〜





「いいからいいからニコニコ

だってパーマンだったら

地面からでも飛べるでしょう?」




え?


なに。挑発?


受けて立とうじゃないの。


なんてったって

あたしは今、パーマンなんだから。


地面から飛ぶって?


ふははは。よゆーよゆー。




「…しかたないな。じゃあいいよ!にっこり





この時、


母は本当に上手いこと

私を言いくるめたと思う。


叱るでも

否定するでもなく

私の気持ちを受け止めた上で

誘導した。


母に地面から飛ぶよう促された私は

1階に戻るとすぐに外へ出た。


そして旅館の玄関先で

両手を高く突き上げながら


「えいっ!えいっ!!」


と何度も何度も

ジャンプを繰り返した。



多分10分以上は

そうしてたんじゃないかな。




結局


飛べなかったチーン

言わずもがな。




一方、


私に一歩出遅れながらも

無事にパーマンに変身した弟。


彼はなんとこの時


私とは入れ違いの時間差で

無事に2階まで到達していた。


当時、旅館の(2階の)一室は

祖父母の私室になっており、


弟は初フライトの記念すべき場所を


じいちゃんばあちゃんの部屋から


と、心に決めていたらしい。


おそらく、

パーマンに変身したそのカッコイイ姿を

見せびらかしたかったのだろう。




パーマン弟が

得意気に部屋へ入ってきたので


「おお!かっこいいね!似合うねニコニコ


とジジババはひたすらべた褒めしていたが


突然


弟は窓を開け、

スーパーマンさながらのポーズを

とったかと思うと



無限の彼方へ〜と


空に向かって飛び…


かけた。



これに慌てたばあちゃん、


咄嗟に弟を

バックドロップ


弟の初フライトは

こうして阻止された。



この一件で


負傷者は

バックドロップをした際に

腰を痛めたばあちゃん

ただ一人だけだった。


色々な偶然が重なって

奇跡的に

私も

弟も

空を飛ばずにすんだのだ。


実際、2階から飛ぼうとした弟は

万が一、飛んでいたとしても

助かった可能性はあるが、


4階から飛ぼうとした私は…

うん。まあ…ね滝汗


本当に空の向こう側に

逝ってしまった可能性が高い。


タイミングがちょっとでもズレていたら

命を失っていたかもしれないと思うと

怪我こそしなかったけれど


ある意味これも

九死に一生を得たのだと思っている。



なお、こういった事故は

実際に結構あるらしい。


小さな子どもは空想と現実の区別がつかない。


だからこそ


新しいおもちゃを渡す際などは

細心の注意が必要で、

子どもを近くで見守りつつ

ちゃんと言葉がけをしてあげること。


事故を未然に防ぐためにも

これはとても大事なことだと思う。




子どもって本当に何をやらかすか

わからない生き物です。


小さなお子さんがいるご家庭では

十分お気をつけくださいね指差し