気分はすでに半落ち状態チーン

「信じない。信じない。
…俺はまだ信じない。真顔

主治医変更に一瞬動揺を見せた旦那だったが
その後落ち着きを取り戻し
そう呟いた。

お前は伊黒小芭内か!←鬼滅の刃
ここはあえて心の中でつっこむ。


心がザワザワと落ち着かないけれど
今後の衝撃に少しでも耐えれるように
ショックの振り幅を最小限に抑えるために、

とりあえず
最悪のパターンを想像した。

告知されたとする。

今考えられる
私の中の最悪な診断予想は

乳ガン
ステージ0の非浸潤癌。

きっと癌だ。

癌なのだ!

癌に違いない!!えーん

あ…どうしよう。
そういえば私の入ってる保険、
2つのうち1つは非浸潤癌だと適応外。

お金おりないじゃんえーんえーんえーん

最悪。

嗚呼…!
もう!だからって浸潤癌ならいいってわけでは
もちろん、ない!

癌じゃないのが1番いい!!


色々な想いが頭の中を交錯する中
長かった待ち時間も2時間を超えたところで

やっと私の名前が呼ばれた。


しかし
中待合室でまた待たされる。

ほどなくして
いつもの診察室ではない、
その隣の診察室から
60代と見られるご夫婦が出てきた。

奥さんの荷物を旦那さんが持ち
寄り添いながら私たちの前を通り過ぎていった。

沈黙が走る。

5分程経過しただろうか。

ついに私の名前が呼ばれた。

先程のご夫婦が出てきた診察室に入ると
50代くらいの優しい雰囲気の男の先生が私を迎えてくれた。

この先生が私の主治医になるんだ。

なんとなくクッキングパパに似ている。
動物にたとえるとくまのプーさん。

クッキングパパとプーさんを
足して2で割った感じの先生だ。

以後私の中で
この先生をクマ先生と呼ぶことにした。

お互いに
はじめましてと挨拶を交わす。

先生は旦那の方に目をやると

「ご主人ですか?」

と優しく尋ねた。

「はい。そうです」

旦那が答えると
再び「はじめまして」の挨拶を交わした。


そしていよいよ本題に…

「先日は針生検の検査お疲れ様でした。
それでね、その結果の前に
マヨさんのこれまでの検査を振り返ってみましょう。」

先生はスクリーンに映し出されている
マンモグラフィ、超音波、MRIの画像を指さした。

マンモには極わずかな影があったけど
ほとんど気にならない程度の影だったということ。

エコーはあきらかな悪性を疑うような
黒いしこりは見られなかったけれど、
モヤモヤとした影が気になったこと。

そして乳房MRIで
癌を疑う診断結果が出たこと。

そのために確定診断のための針生検を
するに至ったこと。

素人の私たち夫婦にもわかりやすいように
クマ先生はこれまでの経過を
順を追って丁寧に説明してくれた。


そしていよいよ核心にせまる。


「それで針生検の結果がきたんだけどね。
ごめんね、
結果はやはり悪性と出てきました。」

先生はパソコンの画像をこちらに向けて見せた。

そこには確かに
【悪性】
の文字が書かれた診断結果。



ああ…やっぱり。。。


私は深く深呼吸をした。

手がかじかむ程冷たく感じた。

クマ先生の説明は続く。

いわゆる普通の浸潤性乳ガンです。


…ん?!

……んん?!!

今、浸潤性って言った?!


「え?!ポーン
浸潤してるんですか?!」

思わず
自分でもびっくりするほどの大きな声が出た。

あれ?

あたしの最悪診断予想…

非浸潤癌だったはず。

しこりはないんだし、浸潤癌ではないはずだ。

あれ?

クマ先生は申し訳なさそうに言った。

「残念だけど…浸潤してました。
出血という自覚症状が出た3年半前から
ちゃんと経過観察してたのにね。
しこりになるタイプの癌ではなくて
中で拡がるタイプの癌だから…
発見までに時間がかかってしまったね。

目の前が真っ暗になった気がした。

「先生…ステージはどのくらいなんですか?」

恐る恐る聞いた。

「うん、癌と診断されたら
ステージというのはとても重要になります。」

「今はまだ針生検で取った組織の中に
がん細胞があったよ。
ということしかわかっていない。
MRIの画像からもある程度の予想はできるけど、
他の臓器に転移があるかどうかでも
ステージは変わってくる。
だから早急に全身の検査をする必要があります。
あとは手術に身体が耐えられるかを調べるための検査も必要です。」

「一応今の段階でわかる範囲で言うと
転移がないと仮定して
ステージは1~2くらいじゃないかなと思う。
針生検の結果からわかったのは
ホルモン療法が効くタイプの癌で
比較的大人しいタイプの癌だということ。
ステージに関しては、
全身検査の検査結果のときに
もう少しはっきりわかりますよ。

でも最終的なステージや癌の性質は
手術で取った癌を病理検査に出した上で
そこでやっとわかるんです。

「それから…
MRIの画像をみてもらうとわかると思うけど、
マヨさんの癌は中で拡がるタイプで、
乳頭の方にも癌細胞が
いってしまっていると思う。
だから残念だけど
手術は全摘になります。

「全摘…」

「まだ若いからね、
希望があれば乳房再建もできるよ」

「再建…したいです。」

「うん!わかった!
癌の進行度合や、治療方針によっては
同時再建は難しいかもしれないけど
いずれにしてもその希望は叶えてあげたいと思う」


話の展開が早いし
予想していた最悪のパターンの上を行く
診断結果だった。

けれどクマ先生の力強い声に少しだけホッとした。

この後も先生の説明は続いたけれど
途中から頭の中がフワフワしてきて

よく覚えていない。

一度だけ泣き出しそうになった。
だけどここで泣いたら止まらなくなると思って
太ももをギュッとつねって
泣くのをこらえた。


「今日できる検査の予約を一通りしますね」

クマ先生がそう言って
私たち夫婦は一旦中待合室へ。

説明の間、旦那はずっと無言だった。

一緒に中待合室の椅子に座ったときも

「…癌だったね…」

「…うん。癌だったなぁ…」

と、一言。

その後会話はなかった。

私は天井を見上げてボーッとしていた。

しばらくして
女性の看護師さん?が隣に座った。

「こんにちは。がん相談員の〇〇です。」

「あ…こんにちは」

「先程一緒にお話を聞いていました。
今はまだショックと驚きでいっぱいだと思いますが…」

すごい。
癌になると専属の相談員がついてくれるのか!
とちょっと感心。

しかもとても優しくて温かい雰囲気の方だった。

有難い。

相談員さんと色々話をしていると
保険の話になった。

「あ!!保険…おりる!!!」

うっかりまた心の声が出てしまう。

「…すみません。
私2つの生命保険に入っているんですけど、
そのうち1つは非浸潤癌だったら1円も下りない保険だったんです…
でも浸潤してたからちゃんと下りるなと…
しかもそれが結構大金で…」

「それは助かりますね!!」

はい!!良かったです!デレデレ
いや、よかったのか…?
浸潤してないにこしたことはなかったんですが…
まあ、でも、良かった…のか?!
複雑ですね!笑い泣き

言いながらクスリと笑ってしまった。

こんなときなのに…
なんて現金なのあたし。

でもお金の心配をしないで治療ができる。

この安心は大きい。

しばらくすると
別の看護師さんが今日受ける
検査の流れを書いた用紙を持ってきてくれた。

肺のレントゲン、血液検査、尿検査、白血球の検査、肺活量の検査、心電図、造影CT

すごい。
急なのに今からこんなにも検査をするなんて。

人間ドックみたいだなと思った。

骨に転移があるかどうかを調べる
骨シンチグラフィという検査だけは、
後日受けることになった。


さあ、いざ検査の旅へ!!

ヨイショと重い腰を持ち上げると、

「検査の前にさ
少しだけ外の空気をすいにいかない?」

久々に旦那が口を開いた。

「うん。そうだね。そうしよう」

私たちは一旦病院の外にでた。

旦那は

「アイコス吸いたいから車で吸ってくるわー。」

そう言って車に向かった。

私は母親に診断結果を伝える電話をした。


後でわかったことだけど

旦那は車の中で泣いていたらしい。

車から戻ってきたときには
そんな素振りを一切見せなかったので

私は全く気付かなかった。



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