〜つなぐ〜 小さな命と風の間にあるもの

〜つなぐ〜 小さな命と風の間にあるもの

猫も犬も、人も赤ちゃんも。心の奥の“ほんとうの声”は風のように静かに届きます。
小さな命の物語や微かなサイン、日々にそっと流れる気づきを綴っています。

 

胸の奥に小さな波が立った。

理由ははっきりしない。

ただ、いつもそこにあったものが、ない。

 

鼻の奥を通り抜けていた、あの風の匂い。

キジ子を感じていた、やわらかな流れが

その朝は、ふっと途切れていた。

 

風の向きが変わった──

そう感じた瞬間、言葉になる前に理解した。

キジ子は、もうここにはいないのだと。

 

知人にそのことを伝えると、

「昨日は心配で、夜も様子を見に行ったの」

という返事が届いた。

 

その後。

キジ子は静かに、息を引き取っていた

と連絡があった。

 

彼女はキジ子を

たくさんの花で包み、

送り出したという。

 

その光景を思い浮かべると、

胸の奥が熱くなった。

けれど不思議と、涙よりも先に

“風”がやってきた。

──頬を撫でるような、やわらかな風。

 

あの日、キジ子が語っていた言葉が

静かに蘇る。

 

「命は自然の中にある。

どこへ進むのも、自然の流れ。

正解も、不正解もない。」

 

そして、

「最後は、この大好きな風の匂いの中がいい。」

 

その言葉のとおりに、

キジ子は旅立ったのだと思う。

彼女が愛した風の中で、

いつもの景色の延長として。

何ひとつ、失われることなく。

 

彼女の魂は、今も風となって漂っている。

鼻の奥を抜ける、あの澄んだ気配。

頬に触れる、あのやさしい感触。

 

それはもう、

“風”というよりも、“記憶”に近い。

 

キジ子が生きた証が、

風の中に、そっと刻まれている。

 

その風は、

秋の園遊会の庭を吹き抜け、

首里の坂を渡り、

御嶽の祈りへとたどり着く。

 

──すべては、つながっていた。

天と地と、いのちと祈り。

そして今も、風が私の頬を撫でている。

 

それは、別れの風ではない。

つながりの風。

 

静かに、やさしく