人生とは次から次へと、
思いもしない事が起こるもんだ。
私にとってのこの二ヶ月は、
激動の二ヶ月と言っていいだろう。
娘のティティが大学を転校し、
息子のケンタが大学に入学し、
そして末っ子のマサキが、
奇跡的にテニスアカデミーへ入る事が出来た。
それに伴って、
私達の生活環境が変わり、
時間的な調節が必要になり、
私は転職せざるを得なくなる。
切羽詰まっているにも関わらず、
友達の紹介により、
この就職難の中、
一週間も経たないうちに仕事が決まった。
しかし、
私の激動の期間は、
それで終わりではなかった。
先々週の金曜日に、
友達に紹介してもらった会社の面接に行き、
火曜日には内定が決まったが・・・。
次の日の水曜日は、
いつものように仕事が休みだから、
私はテニスアカデミーで、
マサキのテニスレッスンを一日中観る予定だった。
テニスコートの側でふと携帯を見ると、
前日からのメッセージに気付く。
人材派遣会社からのメッセージだった。
私の今の仕事は、
6年前マサキが小さかった事もあり、
午前中だけのパートタイムで働いていた。
マサキが少し大きくなり、
金銭的にきつかったので、
フルタイムの仕事を探そうと、
数年前に数件の人材派遣会社に履歴書を送っていた。
一週間前から始まったマサキの送迎で、
今の仕事を続けられそうになかったから、
二週間前にそれらの会社に電話をした。
その時には何も良い情報は得られなかった。
そのメッセージは、
紹介したい仕事があるとのこと。
・・・考えた・・・。
友達に頼んで入れた会社。
まだ始まっていないにしても、
もう決まってしまった事。
それを覆したくはなかった。
・・・悩んだ・・・。
テニスコートの周りをウロウロしながら、
長い間いろいろな事を考えた。
そして私は電話をかけてみる。
内定が決まった会社は初めての仕事内容なので、
低い金額の年俸で始めなければいけなかった。
でも新たに持ち込まれた話の仕事は、
これまで私が経験したことのある仕事。
だから金額的にも高いし、
何よりもテニスアカデミーと同じ町。
もしそこに通う事になれば、
一日二往復の運転を、
一往復だけで済ませる事ができる。
条件はとても良いけど、
それでも悩んだ。
人材派遣会社の人とも、
その時の状況を説明し相談した。
彼女はこちらの会社の方が大きいし、
私の経験済みの仕事だからと強く勧める。
私は返事を一日待ってもらった。
私の考えが決まらなかったからだ。
せっかく決まった内定を、
簡単に断っても良いものか。
そしてこれまでの貧乏な生活に慣れてしまった私は、
そんなに初めから給料を貰っていいものか・・・。
(と言っても十数年前に勤めていた時に
貰っていた金額よりも低いけど。)
少ないバジットで、
ぎりぎりの生活をする事に慣れているから、
そんなにお金があってはいけない気がした。
でもよくよく考えてみると、
お金を貰う事は悪い事ではない。
一番に考えなければいけないのは、
やはりマサキの事。
彼に今必要なことは、
早く家に帰り休息を取る事。
テニスアカデミーに通い始めて一週間だが、
マサキは今の生活にまだ体が慣れていなく、
家に着いたとたんに、
そのままリビングの床に寝そべり、
数時間起きない事も数回あった。
朝はギリギリ6時15分に起こし、
午前6時半に家を出て、
朝食は車の中で済ませる。
午前7時半にテニスセンターに到着。
夜は必ず9時に寝させようとするが、
家に帰ってくるのが午後8時頃だから、
床に就くまでは大忙しだ。
この新たな話が来た会社は、
仕事は朝8時に開始。
社員は全員アメリカ人だから、
午後5時にはきっかり帰宅。
そうすると住所は同じ町だから、
マサキを早く家に連れて帰る事が出来る。
それでも迷って、
友達に相談したり、
今の仕事のオーナーに相談したりした。
結局面接を受ける事にする。
人材派遣会社から、
私の履歴書が通り面接が決まったと連絡が入る。
そこで初めて、
その会社の詳細を知る事ができた。
なんと昔取った杵柄!と言うか、
大昔いた会社がそこの製品を扱っていた。
だからそれが何に使われるかなど、
私はある程度知っていたのだ。
もう一つ驚いた事がある。
テニスアカデミーは大きな町の西の端にある。
端から端までは車で30分はかかるだろう。
その会社はただ同じ町の中にあるとだけ知っていた。
しかし実はテニスセンターから車で出て、
道を真っすぐ行った所にその会社はあった。
それもGoogleマップだとたった6分。
実際ノンストップで運転すると、
カップラーメンが出来上がる間のたった3分!
本当にこんな事があっていいのかと、
私は本当に目を疑った。
あまりに話が上手すぎる・・・。
こんな良い話だけれど、
私は友達の事が気がかりだった。
わざわざ私を会社に紹介してくれた友達。
本当に申し訳ない思いだったから、
土曜日に彼女に会いに行った。
そして状況を説明し謝った。
彼女はまずは自分の家族の事を考えるように言ってくれた。
次の日には彼女の夫にも、
会社はビジネスだから、
断っても大丈夫だと慰めてくれた。
そのおかげで私は、
心を落ち着けて面接ができたのかもしれない。
面接は今週の月曜日にあった。
第一回の面接は先週行われ、
アメリカ人3人、
日本人3人が面接を受けたらしい。
その中の一人のアメリカ人をとても気に入ったらしく、
その人は月曜日から既に働いていた。
そしてその内の日本人の一人は落とされる。
月曜日の面接は日本人二人。
私は午後からで最後の一人だった。
面接は午後3時半から。
周りの友達には、
面接が上手く行くよう祈っていてくれと頼む。
日本の会社であるのに、
アメリカ人しかいない会社。
仕事の内容を聞くと、
お金をたくさん貰って当たり前だと思う程、
大変な内容だった。
それでも私はあまり緊張する事も無く、
終わって外にでると5時だった。
残りの6人の中から、
誰を採用するかを次の日に決めると、
面接官は言っていた。
マサキをテニスアカデミーへ迎えに行き、
我が家へ向かう車の中、
悶々と一人で考えた。
受かっても大変だな・・・・。
でもマサキにとっては、
こちらの方が良いし・・・。
どちらにしても仕事があるということは、
すごく幸運なことよね・・・。
火曜日の昼過ぎ、
人材派遣会社から電話がある。
受かったらしい・・・・。
信じられない!
こんな長い間パートで働いてきたおばちゃんが、
そんな会社に受かってしまうなんて。
こんなことがあってもいいのか・・・。
そして本当に私でもできることなのか。
不安な気持ちでいっぱいだった。
でもそれを長い間考えていると、
以前働いていた時の気持ちが、
いきなり沸き上がってきた。
自分の仕事が認められた時の嬉しさ・・・、
それが蘇ってきたのだ。
I can do it!
Nothing impossible!
次の月曜日から、
その仕事は始まる。
本格的に積極的に、
今度は私の人生をまた歩き始める瞬間。
これまで子どものためだけに仕事をしてきた。
でもこれからはそれだけではだめだ。
生き残っていくためには、
自分の力を出し切らなければならない真剣勝負。
息子のテニスや学校のことだけを、
考えている時期は終わったなぁ。
これで本当によかったのか。
でもこのことは、
また私の上に起こった奇跡である。
人生の幸運を全て使ってしまったような気がするが、
本当に本当に心から感謝している。
後は・・・、
友達に最終結果の電話をしなければ・・・。
内定が決まっている会社にも、
早く連絡しなければ・・。
やっぱり、気が重いね。