昼間のコンビニというものは、朝とも夜とも違う、不思議な時分でございます。

学生は学校へ行き、勤め人は仕事に出ています。

そのため店内には、どこか人の気配が薄く、棚に並ぶ弁当や菓子ばかりが、主人を待つかのように静かにしております。

 

私はある日、昼の勤務に入りました。

店内を掃除し、商品を補充し、レジに立っておりますと、さっきまで満杯だった弁当の棚が、いつの間にか空いていました。

ところが、その空いた場所へ商品を並べ終えると、今度は別の棚から同じ数だけ商品が売れていきます。

まるで店そのものが、売れては生まれ、生まれては売れる仕組みになっているようでございました。

 

もっと妙なこともありました。

昼休みの客が一斉に来たかと思えば、十分ほどすると、誰もいなくなります。

そして静かになったと思った瞬間、また別の客が一人入ってくるのです。

私はその繰り返しを眺めながら、「人の流れも、弁当の流れも、結局は同じなのではないか」と思いました。

 

レジの前に立っている私自身も、昨日までいた人とは少し違います。

昨日覚えていた商品の場所を忘れ、昨日知らなかった客の顔を覚え、昨日まで何とも思わなかった電子レンジの音を、今日は妙に寂しく感じるのです。

 

店内は同じように見えても、客も商品も時間も、決して同じところには留まりません。

 

結局、世の中とは、そういうものなのかもしれません。

売れた商品は棚から消え、消えた商品はまた補充され、人は来ては去り、去ってはまた来ます。

そして私は、今日も同じ制服を着て、同じレジに立つのでございます。

 

「コンビニというものも、なかなか無常なものです。つまりは、留まらぬ川の流れのようでございます」

 

語ったところで、早退を勧められました。

見るからに体調と様子がおかしかったようで……。

 

はい。風邪をひいていました。

 

熱に浮かされて、ぼーっと哲学してましたからね(笑)

 

数日休んだら元にもどりました。

 

 

 

深夜のコンビニでアルバイトをしていた頃の、少し謎なお客さんの話です。

 

私が勤めていた店舗には、往々にして深夜過ぎになると、必ず姿を現す年配の男性がいらっしゃいました。

その男性は店内に入ると真っ直ぐ文具コーナーへ向かい、毎回決まってメモ帳を一冊だけ選んでレジへ持ってきます。

 

そして、お釣りが出ないようにぴったりのお金を支払い、商品を受け取ります。

しかし男性は、そのメモ帳を開くこともポケットにしまうこともなく、レジ横にあるご意見箱へそのまま入れて、店を出て行ってしまうのです。

 

その行動がどうしても気になり、ある夜、思い切って声をかけてみました。

「あの、どうして使わないメモ帳を毎回買ってすぐに捨ててしまうのですか」

 

男性は静かにこちらを見ると、穏やかな笑顔でこう教えてくれました。

「夜中にここへ来て、何か一つ買い物をしたという実感が欲しいだけなんだよ。家に持ち帰ると物が増えて家族に心配されるからね。ここを出るときには手ぶらでいいんだよ」

 

そう言い残すと、男性は静かに夜の街へと歩き去っていきました。

言葉の真意や男性の詳しい暮らしは今でも分からないままですが、深夜のレジ越しに交わした短い会話だけが記憶に残っています。

 

 

 

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店長「今日も1日お疲れさま。なんか分からないことあったら何でも聞いてね」

 

バイト「辞める時って、どのタイミングで言えばいいですか?」

 

店長「辞める時は、私の前に立って『辞めます』ってはっきり言えばいいよ。まあ、まだ先の話だろうけどね」

 

バイト「辞めます」

 

店長「うんうん、発音がいいね……って、え?」

 

その瞬間、彼女はエプロンを外してカウンターに置いた。

 

バイト「お世話になりました。明日からシフト入りませんので、よろしくお願いします」

 

彼女は支給されたばかりのメモ帳を台に置き、バックヤードに置いてあった自分のバッグを肩にかけ、普通の歩き方で店の自動ドアから出て行った。

 

残されたのは、まだ温かいタイムカードと、彼女が急いで帰ったので放置されたままの休憩室のコーヒーカップだけだった。

 

店長はため息をつきながら日報に書き込んだ。

 

「新人、即日退職。なお、欠員補充のため至急、求人票をインディードとタウンワークに出してください」

 

私は、今日も平和だなと思いながらその様子を眺めていた。

 

 

 

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ある平日、午後3時頃。  

私はいつものようにコンビニのレジに立っていました。

 

すると突然、駐車場にデカい観光バスがどーんと停まります。  

私(……なんか来たな)

 

ドアが開くと同時に、  

ゾロゾロゾロ……と、70歳以上は確実なおじいちゃんおばあちゃんの集団が雪崩のように店内へ。

 

私(ヤバい!! 完全にコンビニ慣れしてないツアーだ……)

 

案の定、店内が一瞬で戦場になりました。

 

 おじいさんA「これ、電子レンジで温めてくれんか?」  

   店員「はい!」  

   30秒後、おじいさんBが同じ商品をレジに持ってきて  

   「温めてくれんかったぞ! 機械が壊れとる!」

 店員「それはまだレジ通してません。温める前ですよ」

 

 おばあさんC「このおにぎり、税込でいくら?」  

   私「198円です」  

   おばあさん「え、税別? 税込?」を3回繰り返し、最後に  

     「……じゃあ2個ちょうだい。袋は有料なん? おにぎり高いねぇ!」

 

おじいさんD(80歳くらい)が、 ホットスナックコーナーの「からあげクン」をじーっと見つめて、  

「これ、揚げたてかい?」

と聞くので、  

「はい、できたてです!」

と答えたら、  

おじいさん、真顔で

「じゃあ一個、試食させてくれんか?」

 

……試食!?

 

何か周囲も、

「そうそう、試食したい!」

と乗り気になり、  

一瞬でホットスナック売り場が試食会会場と化しそうに。

 

私は慌てて  

「試食はちょっと……!」

と止めたんですが、  

おじいさんDが至極真面目に  

「昔はスーパーで試食させてもらえたのにのう……時代は変わったなあ」

しみじみ言われて、なんか申し訳なくなってきました。

 

結局、からあげクンをたくさん売れました。  

しかも各人が買っていたので、レジが完全に詰まりました。

 

もちろん他にもシニア客があちこち店内を見て回っています。

次々買っていきます。

商品が分からなくて、店員に聞いている人もいます。

 

バスが発車する前、  

おばあさんが私に近づいてきて、  

「若いのに頑張っとるのう。飴ちゃんあげるわ」  

と、飴を一粒握らせてくれました。

 

……飴一粒で癒されました。

 

コンビニあるあるですが、シニアツアーのバスが来ると、いつもより心が疲れて、でもちょっと温かくなることもあるんですよね。

 

良い経験です。

 

 

 

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モンゴル出身のBさんがコンビニ夜勤でバイトを始めた頃から、店はちょっとしたサーカス状態でした。

彼女のテンションはいつもMAXで、レジ打ちながらたまに何か叫んだりするので、常連さんもびっくり。

 

ある晩、またトラブル発生。  

レジで文句を言ってきたおじさんが、苛立ってこう吐き捨てたのです。

 

「このブス! トロトロやってないでさっさとしろ」

 

次の瞬間、Bさんは、

「ブスだと!?」

と目がギラッと光り、  

制服を勢いよく脱ぎ捨て、

「おーい待てー!」

と叫びながら店外までダッシュ。  

夜の駐車場を全力疾走で追いかけていく姿は、まるでモンゴル高原の馬追い競争でした。

 

おじさんは悲鳴を上げて逃げ、追い返したAさんは息切れしながら、

「勝った!」

とガッツポーズ。

 

翌朝、店長がため息まじりに言いました。  

「Bさん、……もう来なくていいよ。君の個性、強すぎてコンビニには危険すぎる」

 

Bさんは「ふんっ!」と鼻息荒く去っていきました。

 

やっぱり、個性が強すぎるのも、コンビニバイトでは生き残りづらいみたいです。  

店内は静かになったけど、なんだか味気ない夜勤が続きました。

 

 

 

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