「うわー、2個もあるし!うはは、どしたぁ?」
洋平は俊介の髪をいじると、笑いながら訊いた。
「何だろ?あ、お前らが心配ばっか掛けるからだろ?困ったもんだ」
俊介はため息交じりで答えた。
しかし、口調とは違って笑顔のため、さほど怒っている様子はない。
「えー?そんなに掛けてないだろ」
「あー、ソウデスネ」
「うっわ、めっちゃ棒読み!」
「ははっ――う。いった……」
「どした?」
笑った俊介が急に体を曲げたため、洋平が不思議そうに訊いた。
答えようとした俊介は、椅子から崩れ落ちると腹を押さえ、倒れ込んだ。
「……痛」
「え、何?マジで?」
焦った様子で洋平が訊くが、俊介はそのままうずくまって唸るだけだ。
顔色は真っ青になり、油汗が浮かんでいる。
義と洋平は顔を見合わせる。
「とりあえず、保健室」
義が言うと、洋平は俊介を抱き起こした。
「保健室連れてくから、先生来たら言っといて!」
近くの席の生徒に頼むと、洋平と義は両脇から俊介の体を支え、保健室へ向かった。
後から来た担任と保険医が俊介を病院に連れて行くのを見届けると、洋平と義は教室へと向かった。
教室がある階まで来ると、義の足が止まった。
「どした?」
「…………」
義は俯いたまま、動かない。
「義?」
出来るだけ柔らかい口調を意識した洋平が覗き込むと、義は泣きそうな目で顔を上げた。
「……駄目だ」
「何が?」
「迷惑掛けた」
「ん?」
「俺が迷惑掛けたからっ。だから――」
「違うって。変なもん食っただけかもしんねぇし」
「……シュン、死なない、かな?」
「そう簡単にあのバカが死ぬか、バカ」
「死ぬの、嫌じゃん」
小さくつぶやくと、義はイヤイヤをするように首を横に振った。
まるで子供のような様子に洋平は困った表情で頭を掻くと、ため息をついた。
「……サボろっか」
「え?」
「出てもどうせ寝てるだけだし」
そう言うと、洋平はさっさと階段を上り始めた。
義はあわてて目を擦ると、その後を追う。
洋平は屋上に向かうと、ドアを開けた。
強い風が2人を包む。
「はぁー。気持ちいいなぁ」
「……ん」
「あーあ」
洋平は大きく息をつくと、その場に仰向けに寝転がった。
義はその横に、膝を抱えて座り込んだ。
「なぁ、義、何か歌ってー」
「いいけど。サボってんの、バレるじゃん」
「意外とお前って常識人なんだなぁ。いいじゃん、そんときゃそんときで」
洋平は口の端を上げてにやりと笑うと、目を閉じた。
義は胡坐へ体勢を変えると、洋平の顔を見下ろした。
何でもない風を装っているが、洋平が俊介のことを気に掛けているのがよく分かった。
「……ヤマって」
「んー?」
「や、何でもない」
義はそう言うと、空を仰いだ。
雲が、ものすごい速さで流れている。
「何、歌おうか?」