2年になり、就職クラスに進級した義は、教室で見知った顔を見て笑顔になった。
「ぅはよ」
「おぅ、おはよ」
「おはよう」
遠慮がちに挨拶をすれば、窓際の1番後ろとその前に座っていた俊介と洋平が笑顔で返した。
ほっとしつつ、義はその隣りの列の1番後ろの席へバッグを置く。
「また、同じクラスだなぁ。よろしくな」
椅子に上体を預け、2人の方に向いていた俊介は、満面の笑みで言った。
洋平は顔をしかめる。
「また1年、うっさいのと一緒かぁ」
「いいじゃん。俺は嬉しいし?」
俊介はそう言いながら、バシバシと洋平の背中を叩いた。
うざそうにその手を払いながらも、洋平の目の奥と口元も嬉しそうだった。
「なぁ?」
ぼんやりと見ていた義に、俊介が言った。
一瞬迷ったあと、義は小さくうなずく。
初めて話したあとから、ことあるごとにちょっかいを出してくる俊介と、それに付き合わされている洋平にもかなり慣れてきた。
「あ、あの、六平くん、おはよう」
突然、声を掛けられ、義はビクッと身を竦めた。
振り返れば、女子生徒が3人、伺うような表情で立っていた。
「あ、え、ぉはよ」
戸惑いながらも挨拶を返せば、3人はきゃあきゃあ言いながら自分たちの席へと戻っていった。
「あっは。何で怯えてんの?」
その様子を見ていた俊介がおかしそうに訊いた。
「お前、モテんなぁ」
洋平も笑いながら冷やかした。
「や、挨拶されるの、慣れてない」
戸惑った表情のまま、義が答えると、2人は声を立てて笑った。
「クラスメイトじゃん。早く慣れろよ」
「お前、人見知りにも程があるだろ。見た目いいんだし、愛想良くしとけばモテまくりだって」
「そんなん、今まで、あんま無かったし」
義が言い訳をすると、俊介が小首を傾げた。
「もう少し気楽にやんないと、疲れねぇ?」
「……何か、周りが皆、敵に見える」
ぼそっと義が言うと、洋平が軽く眉を寄せた。
「あー……」
「何考えてるか、わかんなくて、怖い」
「俺らも敵か?」
俊介が顔を覗き込むようにして訊いた。
義は答えに詰まって、黙り込んだ。
その様子に、俊介の顔が曇る。
しまった、と思ったときには、洋平も困った表情で2人を見ているのがわかった。
それでも、上手い言葉が見つからない。
何か言わなくては、と義が焦ったとき、担任が入ってきた。
「出席取るぞー」
その声で、俊介は「また、あとでな」と小さく言い、前を向いてしまった。
担任の声を聞きながら、義は右手で頬杖を付く。
空を見たかったが、洋平が目に入ることが気になり、じっと机を見つめた。