家に帰るときに、今日は祭りだったということに気が付いた。
屋台が並び、歩行者専用になった通りは、人の波で進めない。
まるで、自分が魚にでもなったようだ。
僕はネクタイを緩め、首筋に手をやった。
じとっとした体温と、流れるような汗が手に触れる。
横道に入ろうと端に寄ると、金魚の屋台が視界に入った。
涼しそうな水槽に引き寄せられるように、僕はふらふらと足を向けた。
ひらひらひら。
赤い尾びれが、目の前を横切る。
……ああ、まるで、君みたいだ。
ひらひらと、僕のことなんか気にも留めず、涼しげな顔で泳いでいくんだ。
僕は無理矢理、金魚から目をそらした。
……早く、家へ帰らないと。
ぽたり、と汗がアスファルトに落ちた。
「……ただいま」
ぽつりと呟き、部屋へ入る。返事がないことはわかっているけれど、長年の癖だから、仕方ない。
いつものように洗面所へ行き、いつものように冷蔵庫を覗き、いつものようにテレビの前に座る。
ビールを飲みながらテレビを点けると、ほら、君が映る。
ひらひらひら。
スカートの裾を翻し、君は完璧な笑みを浮かべる。
一方的に紡ぎ出されるその言葉は、まるで、水の中で話しているようで、僕が言いたいこととは噛み合わない。
ひらひらと、僕の存在に気付くこともなく、君はテレビの中を泳いでいる。
それでも、ほら。
ブラウン管の中の君は、まるで、金魚。
ひらひらと、水槽の中を泳いでいく。
手を差し伸べても、その隙間をするりと身を翻し、涼しげな顔でにこりと微笑む。
……ああ、それでも。
僕は、水槽を手放せないんだ。
※
毎日、暑いですねぇ。
先週末は、夏祭りでした。でも、行けなかったけど。
あ、でも、私は、金魚掬いはやらないです(笑)
生き物飼うの、怖い……。