博也を保育園に迎えに行ったその足で、睦亮と忠成は商店街へと向かった。

  スーパーで頼まれた砂糖と醤油を買うと、もう1枚、福引補助券を貰った。

  福引き用のテントまで行くと、商店街の会長と電気屋の主人が笑顔で迎えた。

「お願いします」

 忠成が補助券を差し出すと、会長が枚数を数えた。

「あー、9枚かぁ。5枚で1回だから、あと1枚あると2回出来るんだけどね。持ってないのかな?」

 睦亮は首を振ると、仕方なさそうに忠成を見た。

「他に頼まれてるもんも無いしな。ええわ、ナリやれや」

「んー……」

 睦亮に言われた忠成は、少し悩んでから首を横に振った。

「僕もいい。ヒロちゃんにやらせたげる」

「そうか。なら、ヒロやれや」

 2人が、手を繋いでいる博也を見下ろして言ったときだった。

「1枚余ってるから、もし良ければどうぞ」

 福引きを終え、側にいた老婦人が、にこやかに補助券を1枚差し出した。

 睦亮は躊躇し、忠成を見た。

 忠成も迷っている様子で、補助券と睦亮を交互に見つめる。

「今日で終わりだし。もう、お婆ちゃんは1回やったから、気にしなくて大丈夫よ?」

 老婦人が笑い、睦亮は遠慮がちに補助券を受け取った。

「ありがとうございます」

「ありがとぉ」

「ありがとー」

 3人が礼を言うと、老婦人は「どう致しまして」と同じ様に頭を下げた。

「よし、じゃあ、2回だ」

 会長が笑顔で言い、まず、忠成が回転抽選器を回した。

 白色の玉が転がり出た。

「あーっ、残念!ポケットティッシュか飴だねぇ」

 会長が残念そうに言い、心配そうに見ていた老婦人と電気屋の主人もため息をついた。

「よし、もう1回!」

 明るい声で、会長が人差し指を立てて言った。

「博也、回せや」

 睦亮が言うと、博也は少し困った様子で見上げた。

「ナリみたくな、ここ持って、ぐるんって回すねん」

「うんっ」

 睦亮は、博也を抱え上げた。

 博也は真剣な表情で、抽選器を回した。

 ――金色の玉が、転がり出た。

 一瞬の間の後、電気屋の主人が鐘を鳴らした。

「おめでとうございまーす!1等出ましたー!」

「おー、僕、やったなぁ!」

「あらあら、良かったわねぇ」

 驚いた顔で、それぞれが声を掛けた。

 睦亮は博也を下ろすと、ぐしゃぐしゃと頭を撫でて笑う。

 忠成も興奮した様子で、ばたばたと手を動かした。

「すごいやん!」

「すごいなぁ!」

 状況が飲み込めていない博也は、周りが喜んでいることにつられ、にっこりと笑った。

「はいっ!1等は、伊豆のペア旅行券!」

 目録を渡された睦亮は、少し困った表情になった。

「あらぁ、伊豆?いいところねぇ」

 老婦人が微笑むと、忠成が見上げて首を傾げた。

「ええとこなの?」

「温泉もあるし、海もあるし。お婆ちゃん、昔、新婚旅行で行ったことがあるのよ」

「ふぅん」

「……ペアって、2人分ってこと?」

 睦亮が訊くと、会長と電気屋の主人がうなずいた。

「そうだよ。お父さんとお母さんにプレゼントすれば、喜ぶぞ」

 電気屋の主人の言葉に、睦亮は更に困った顔になった。