「おー、一条!」
「あ、リョウちゃん。今日、一緒かぁ」
音楽番組の本番待ちでテレビ局内をふらふらしていた一条裕之は、顔見知りに声を掛けられて笑顔になった。
裕之の言葉に、相手は呆れた顔になる。
「台本見ろって。しかも、昨夜、メールしたじゃん」
「実は昨日、携帯壊しちゃってさ。メール、確認出来てない」
「うっわ、サイアク」
「マジで困ってんだよ」
裕之がため息混じりに言うと、おかしそうな笑い声が返った。
音楽番組の共演がきっかけで仲良くなった都丸良介は、裕之と同じ歳でもある。
6人組のアイドルグループ「KNIZE(ナイツ)」のメンバーの1人で、B-Mより完全に認知度は高い。
「ま、いいけど。で、何してんの?」
「暇潰し」
「俺らの楽屋、来る?」
「あ、行く行くっ」
良介の申し出に、裕之は元気に答えた。
控え室に向かうと、裕之は挨拶をして中へと入った。
良介ほど仲良くはないが、他のメンバーとも面識はもちろんある。
本番を控え、迷惑かと思ったが、それぞれ好き勝手に過ごしているようで、裕之はほっとする。
空いていた椅子に座り、裕之は良介とL字の位置に落ち着いた。
「今日、これ終わったら用事あんの?」
良介に訊かれ、裕之は首を横に振った。
「ないよ」
「俺もないんだ。飯食いに行かね?」
嬉しそうな顔で、良介が言った。
「前に、一条がよく行く焼肉屋あるって言ってたじゃん。案内して」
「いいよ。じゃ、終わったら」
「何なにー?」
明るい声が聞こえ、内山光輝が会話に割り込んで来た。
わざわざ、裕之と良介の間に椅子を持って来て座る。
「せまいよ」
「いーのっ」
光輝は答えると、にっと笑って裕之を見た。
「俺も一条くんと遊びに行くっ」
裕之たちよりも2歳年下の光輝は、妙に裕之に懐いている。
ボーカルを勤めるB-Mでも家族でも、いつも1番年下の裕之としては弟が出来たようで悪い気はしない。
「肉食いに行くんだけど、来る?」
裕之が訊くと、光輝の目が輝いた。
「行くっ」
「えー、お前来るとゆっくり話出来ねえし」
不満そうに良介が言うと、光輝は唇を尖らせた。
「そんなことないよ」
「いいや、ある」
2人が言い合っていると、他のメンバーが呆れた顔で視線を寄越した。
「わがまま言うなよ、光輝」
最年長の山西博也に言われ、光輝は仕方なさそうに辞退した。
「次は絶対行くからねっ」
と強く念を押してだったが。
収録を終え、裕之は良介と待ち合わせた。
目的の焼肉屋は、B-Mが共同生活をしている家から近いため、帰りの車に良介が便乗するという形になった。
「2人とも、あんまり羽目外すなよ」
六平メグミに言われ、裕之と良介は店の前で車を降りた。
勧めたからには気に入ってもらわないと、と裕之は少しどきどきしながら注文をする。
良介の口にも合ったようで、裕之は安心した。
安心すれば気楽になり、音楽の話から恋愛の話まで盛り上がる。
2時間ほどで食事は終わり、2人は店を出た。
「どうする?」
「んー、俺んち来る?」
良介に言われ、裕之は少し考えた。
明日は学校に行く日だ。少しくらい夜更かししても、支障はない。
裕之はともかく、良介が所属する事務所はかなりの大手だ。
しかも、肩書きは「アイドル」である。
未成年のアイドルが、夜の街をふらふらしているのは問題だ。
それなら、自宅で遊んでいる方がいい、ということだろう。
2人はタクシーを捕まえると、良介のマンションへと向かう。
「俺、リョウちゃんの新曲、真似出来るようになった」
ふと、裕之が言うと、良介はにっと笑った。
「マジで?あとで見せてもらお」
※
20071202初稿
通算99本目の話が、レギュラーキャラ1人って(笑)