日曜日の朝は、アルバイトもなく、もちろん学校もなく、裕一はゆっくりと寝ることにしていた。

 布団の中にいると、いつも忠成や博也が起こしに来て目が覚める――はずなのだが。

「……うっさい」

 裕一はつぶやくと、むくりと起き上がった。

 ぼーっとしたまま、部屋を出ると居間へ入る。

「あ、ユウちゃん、おはよう」

「ユウ兄ちゃん、おはよ」

 ゲームをしていた隆志と睦亮が、顔を上げて挨拶をした。

「……ぉはよ」

 挨拶を返した裕一は、大きなあくびをしながら座った。

「まだ、寝ててもいいのに、どうしたん?」

 隆志が訊くと、裕一はテーブルに突っ伏した。

「光信は?」

「外におるよ。今日は、道路清掃の日やからね」

「それでか」

 裕一はつぶやくと、苦笑した。

 外からは、近所の主婦たちの声と、それ以上に響く光信の声が聞こえて来ていた。

「ああ、あの声で起きたん?」

「おん。あいつは、何であんなに元気やねん」

「はりきって、ショウちゃんとヒロも連れてった」

 睦亮は笑うと、報告をした。

 裕一は体を起こすと、首を回した。

「ユウちゃん、何か食べる?」

 隆志が訊くと、裕一はもう1度、あくびをした。

「んー、コーヒー入れてもらおかな」

「はいはーい」

 元気に答えると、隆志は台所へと向かった。

 裕一は、睦亮を見ると訊いた。

「昂次と忠成は?」

「まだ、寝とる。朝飯、用意したんやけど。昼に回すってミツ兄ちゃん言うてた」

「そうか」

 裕一は答えると、パジャマ代わりのTシャツに手を入れ、腹を掻いた。

 コーヒーを入れて戻って来た隆志が、それを見て苦笑する。

「こんなとこ、クラスの女子には見せられないなぁ」


「ほんまですかぁ?」

 光信が笑顔で訊くと、主婦の1人が大きくうなずいた。

 道路清掃は終わったのだが、光信と章五と博也は参加していた数人の主婦たちに捕まっていた。

「そうよぉ。魚買うんだったら、スーパーのより、あそこの店の方が美味しいんだからぁ」

「まあ、そうですよねぇ。専門店やし。でも、高かったりしませんか?」

 光信の質問に、違う主婦が首を振る。

「それがね、そんなに変わらないのよ。おまけもしてくれるし」

「それは、綺麗な人が買うからですよ」

「もう、そんな、口が上手いんだからぁ」

 あはははと笑いが起き、それを聞いていた章五は、こっそりと肩を竦めた。

「ショウちゃー」

 博也が章五の服を引っ張ると、名前を呼んだ。

「ん、どしたん?」

「お腹減ったー」

「そっか。ちょお待ってな?」

 章五はうなずくと、光信の背中を軽く叩いた。

「ミツ兄。ヒロが、お腹減ったって」

「そっかそっか。すいません、じゃ、うちはこれで失礼します」

「あら、そうよねぇ」

「博也くんも、働いたもんね」

「ごめんなさいねぇ、引き止めちゃって」

「いえいえ。お疲れ様でしたぁ!」

 元気に挨拶をすると、光信は博也の手を引いた。

 章五もあわてて主婦たちに頭を下げ、後を追う。

 玄関に入ると、章五が腑に落ちない顔で首を傾げた。

「ミツ兄、何であんななん?」

 博也が靴を脱ぐのを手伝うため、しゃがみ込んでいた光信が、章五を見上げた。

「んー、何が?」

「いつも『正直になれ』言うやん。やのに、お世辞言うたり」

「近所付き合いは大事やからな。仲良くなっとって、損はないやろ?」

 にっと笑うと、光信が答えた。

 章五は大きなため息をつく。

「そうやけどぉ」

「何や、ショウはあの人たち、苦手か?」

「……うん、ちょっと」

 正直に答えた章五に、光信は声を立てて笑った。