「光くんって、隣りの可愛い子だっけ?」
佐田清加が、ドリンクバーで紅茶を選びながら訊いた。
「うん。双子の片方」
美奈はうなずくと、グラスを持ってテーブルへと戻った。
「彼女じゃないの?ほら、美奈ちゃんの手前、照れたとか」
「んー、そうかなぁ。関西弁っぽかったから元カノとかかも」
美奈と清加は、席でしばらく話した。
他の話題になったあとも、美奈は理生のことを気にしていた。
美奈が家に帰ってくると、門の前に人影があった。
「――理生ちゃん、だっけ?」
「あ」
理生は美奈の姿を見ると、ぴょこんと頭を下げた。
「どうしたの?」
「えっと、コウちゃんとしゃべりたいのに、出て来てくれないんですぅ。やから、ずっと待ってて」
「え、いつから?」
「んー、3時間くらい?」
理生は時計を見ると、困った様子で微笑んだ。
美奈は目を丸くする。
「何でそんなに」
「会いたくて来たけど、あんまお金ないし。ホテルとか泊まれへんから日帰りと思ってたけど、やっぱり、もう少し話したいし、顔見たい思うて」
「…………」
うつむき加減で言う理生に、美奈はきゅぅんとする。
何とかしてあげたい、と思い、つい、藤本家のチャイムを押していた。
「はい?」
玄関に出てきたのは、強だった。
「光くんは!?」
美奈が言うと、強はちらりと後ろにいる理生を見て、首を振った。
「何で?せっかく会いに来てくれたんでしょ?少しくらい話してあげてもいいじゃない」
美奈が言うと、強は困った表情になった。
理生は目を潤ませると、美奈の手を掴んだ。
「もう、ええです。避けられるの、慣れてるし」
「駄目だよ、そんなの。淋しいこと、言わないで」
「お姉さぁん!」
真剣に言う美奈に、理生は完全に涙を浮かべた。
2人は手を取り合うと、うるうるとした目で見つめ合う。
「……美奈ちゃんまで巻き込むなや」
疲れた声とともに、2階から光が下りて来た。
「光くん、話くらいしてあげてもいいじゃない。元カノとかじゃないの?」
「全っっ然っ、ちゃうっ!!」
力いっぱい、光が否定した。
「ま、とりあえず、お茶でも」
強が、全員を居間へと通した。
親がまだ帰って来ていないらしく、強がお茶を用意する。
4人は、居間のテーブルへと着いた。
余計なこと、しちゃったかも。
美奈はこの状況になってから、我に返った。
会いたくもないほど光が嫌がっているとしたら、何か理由があるのかもしれない。
「……あの、ごめんね」
沈黙に耐え切れず、美奈は謝った。
「いや、ただ逃げてるだけの光が悪い」
強が言うと、光は不貞腐れた顔になる。
「逃げてへん。そもそも、始めにちゃんと断ってんもん」
「何でうちやとあかんの?」
理生が胸元で両手を組み、潤んだ瞳で光に訊いた。
「そんなん決まっとるやろ!」
光は声を大きくすると、理生に人差し指を突きつけた。
「理生が男だからやろ!」
美奈はそれを聞いて、飲もうとしていたお茶を吹き出した。
「どうぞ」
強が冷静に、ティッシュの箱を美奈に渡した。
美奈は礼を言って受け取ると、あわてて口元を拭う。
「ちょ、ちょっと待って?男?」
「うん」
「――って、誰が?」
「こいつが」
「だ、だって――」
美奈は、頭の中が混乱してきた。
「ほんまに男」
「でも、気持ちは乙女やもん」
理生は可愛らしく、唇を尖らせた。
もともと、ダンスのイベントで知り合ったそうだが、そのときは光も強も理生のことを女性だと思っていたらしい。
――シャワー室で一緒になるまでは。
理生はそれでも光に猛プッシュしていたのだが、光はずっと断り続けている。
引っ越したことで、もう、会うことはないかと思っていたのだが、追いかけて来たようだ。
「お姉さんは、味方、ですよね?」
うるうるとした理生に訊かれ、美奈は困惑した表情のまま、曖昧にうなずいた。
※
20070912初稿
関西弁、インチキで申し訳ないです(滝汗)
藤本双子は友人用に、友人の好きな芸能人をモデルにしたんですが、結局、自分の好きで書き易いタイプになってしまいました(苦笑)