花火の時間が近付いているためか、川べりに向かう人の流れが出来ている。

 その中を、屋台を覗いたり、友人と会って話したりしながら、隆志と章五、睦亮はのんびりと歩いていた。

「あ、金魚や」

 章五がはしゃいだ声を上げ、水槽に近付いた。

「綺麗やねぇ」

 隆志は膝に手をつくと、しゃがみ込んだ章五の肩越しに覗き込んだ。

 同じ様にしゃがんだ睦亮は、2人を見上げると「やんの?」と訊いた。

「んー、気にはなるけど――」

 軽く眉を寄せ、章五が言い掛けたときだった。

「おじさーん、この金魚、死んでる」

 隣りにいた少年が、店主に声を掛けた。

「ん?ああ、本当だ」

 店主は軽い口調で言うと、浮いたままになっている金魚をすくい、何やら足元へと移した。

 それを見た章五と睦亮は立ち上がった。

「やらんでええの?」

 隆志が訊くと、2人はうなずいた。

「やっぱし、生き物やし……」

「……うん」

「そうやね。なら、何か食べるもん買って帰ろうか?」

 沈んだ空気を払うようにパンッと両手を胸の前で合わせると、隆志は笑顔で訊いた。

「あ、俺、焼きそば食いたいっ」

 笑顔になった睦亮が言うと、章五が右手を上げた。

「叔母さんに、何かお土産買うてこうや」

「なら、林檎飴買ってく」

 章五の提案に、睦亮も楽しそうに答えた。

「じゃ、焼きそばと林檎飴買って、叔母さんとこ寄ってこうな?」

 隆志が言ったときだった。

 どんっ!という大きな音とともに、周りにいた人たちが一斉に空を仰いだ。

 ――火の華が開く。

 一瞬、雑音が途切れ、すぐにざわめきが戻った。

「なあっ!川の近く通って、花火見ながら、叔母さんち行こうや」

 くしゃっと満面の笑みになると、章五が明るい声で言った。


「いらっしゃーい」

「いらっしゃぁい」

 叔母の家のチャイムを鳴らすと、博也と忠成が出迎えた。

「え、何でおんの?」

 睦亮が驚いた顔をすると、博也と忠成は楽しそうに声を立てて笑った。

 リビングから出て来た裕一が、にっと笑って言った。

「俺が連れてきた。叔母さんに、西瓜と浴衣のお礼言おう思ってな」

「そうなんや。俺らも、お土産持ってきてん」

 章五が言うと、隆志が持っていたビニール袋を持ち上げて見せた。

 睦亮と章五、隆志が靴を脱いでいると、チャイムが鳴った。

「こんばんはぁ!」

「お邪魔し――って、何や、皆して」

 勢いよく開いたドアから顔を出したのは、光信と昂次だった。

「どしたん?」

 裕一が訊くと、昂次は持っていたビニール袋を手渡した。

「西瓜のお礼、持って来た」

「考えること、皆、同じやな」

 裕一が、にっと口の端を上げる。

「とりあえず、上がらせて。叔母さんに挨拶せな」

 光信はそう言うと、靴を脱ぎ始めた。

 全員がリビングに入ると、玄関に残っていた章五は、急に増えた靴の数に笑顔を見せた。

 

 



080713初稿


浴衣―!浴衣―!――というわけで、個人的脳内浴衣祭りが開催されていたころに、勢いで書いたものです(笑)

和服っていいなぁ……。

関口家書くときは、「兄弟以外は名前を出さない」というルールも作っていたりします。

どこまで頑張れるか……。


20111107 改稿


呼び方変更。