「あいつは何やねん、もう!」

 怒りと心配が混ざった口調で怒鳴った光信は、肉じゃがに箸を突き立てた。

「とりあえず、今日は連絡あったからええやんけ。昂次やって、付き合いとかあるんやろうし」

 裕一が呆れた様子で言うと、光信は不満そうな顔をした。

「それは、まあ、そうやけどなぁ」

「コウちゃと全然遊んでなーい」

 つまらなそうな様子で、博也が口を尖らせた。

 それを聞いた裕一は、急に態度を変え、眉間に皺を寄せた。

「ったく、昂次は博也放って、何してんねん」

「言うてること、ちゃうやん!」

 憮然とした口調で、光信が言った。

 裕一は、わざとらしく咳払いをする。

「ま、確かに、毎日遅いってのは気んなるな」

「ほんまに遅かったもん」

「ろくに顔も見てないや」

 章五と睦亮も、つまらなそうな様子でつぶやいた。

「僕、今日、見たぁ」

 口に入れていたご飯を飲み込んだ忠成が、笑顔で手を上げた。

「タァちゃんっ」

「あっ」

 隣りに座っている隆志があわてて言うと、忠成はしまったという顔で、箸を持ったまま、両手で自分の口を押さえた。

 全員の視線が、隆志と忠成に注がれる。

「タカ兄ちゃん、僕の負けやなぁ」

「あー、そう、やね」

「――隆志。お前、何か知ってるやろ?」

 裕一の言葉に、隆志はぶんぶんと首を横に振った。

 しかし、それで済むはずもなく――

 数分後。隆志と忠成は、昂次を見掛けたことを白状させられていた。

「スナックって、どういうことや?」

「彼女かぁ?」

「いや、でも、かなり年上やったんですけど」

「美人さんやったぁ」

 忠成が楽しそうに言うと、隆志はがっくりと肩を落とす。

「……タァちゃん、正直過ぎるわ、もう」

「タカは何で隠そうとしたん?」

 光信が訊くと、隆志は困った様子のまま、正座を崩した。

「いや、やって、コウちゃんが言わないから、言わん方がええかなぁ、なんて」

「……まあ、それもそうやけど」

 少々、納得出来ない様子で、光信はつぶやいた。


 朝になり、半分寝たまま、昂次がテーブルに着くと、全員の視線が集まった。

「……何や?」

 昂次は、訝しげに見回す。

 光信がちらっと裕一に目をやると、裕一は一旦うつむいてから、気合いを入れて顔を上げた。

「ええとぉ――昂次にちょっと訊きたいことがあるんやけど」

「何?」

「何で、夕飯も食べずに、朝帰りが続いてるんかなぁって」

「……別にええやん」

「そりゃまあ、構へんけど。やっぱし、気んなるやんか?皆も心配してるしな」

「心配されるようなことはしてへん」

 きっぱりと言った昂次に、我慢し切れなくなった光信が口を挟んだ。

「何言うてん!そんなん、心配掛けてるんは事実やろ!?」

「大丈夫やから、放っとけや」

「はあ!?お前なぁ――」

 続けようとした光信を、裕一が抑えた。

「光信、落ち着けって」

「落ち着いとるわ!」

「まあまあ。――こうなったら、最終兵器やな」

 にやりと笑った裕一は、向かいに座っている博也を見た。

「博也ぁ。昂次に言うてやれ」

 裕一の言葉に、博也は幼児用の椅子から立ち上がると、昂次の側へ行った。

 そのまま、昂次の袖を掴むと、じぃっと見つめる。

「あんなぁ、コウちゃが遊んでくれへんから、つまんないねん。ぼくも一緒に出掛けるぅ」

 そう言われた昂次は博也を抱え込むと、キッと裕一を睨んだ。

「ヒロ使うんは卑怯やろ!?」

「もう、負け決定やね」

 ぼそっと隆志がつぶやくと、章五と睦亮が吹き出した。

「で?何で、ホステスさんと一緒におったん?」

 光信が訊くと、昂次は顔をしかめた。

「そこまで知ってんなら、訊くなや」

「や、それしか知らんから、気ぃなってん。彼女いうんなら、別に構へんで?美人らしいし、年上やって、好みは人それぞれやしな?」

「ちゃうわ、アホ」

「なら、何?」

「…………」

 昂次はかなり迷ってから、大きなため息をついた。

「――ああっ、わかったっ。全部言うわ、もうっ」

「その前に、博也を離せや」

 呆れた口調で、裕一が言った。