裕一は携帯電話の着信音で、目を覚ました。

「やばっ、寝てた!?

 思わずつぶやき、あわてて携帯電話に出た。

 電話の相手は章五だったため、メリーゴーランドの入り口まで来るように伝える。

 裕一はベンチから立ち上がると、周りを見回した。

 ――忠成と博也の姿が見えない。

「え、マジで……?」

 裕一は、顔から血が引いていくのがわかった。

 体が強張っていることに気付いた裕一は、この場にいた方がいいのか、探しに行った方がいいのか迷う。

 とりあえず、落ち着こうと大きく息を吸ったときだった。

 どんっと、腰に衝撃を受けた。

「博也っ!」

「ユウちゃ、おったー」

「ごめんなぁ、ヒロちゃんが風船――」

「忠成も無事か!?

 姿を見た途端、ほっとした裕一は、つい、声が大きくなった。

 きつい裕一の声に、2人は身を竦めた。

「何で勝手に離れてん!?

「……ごめんなさい」

 忠成は謝ると、きゅっと唇を噛んだ。

「やって、うさぎがおってん」

 泣きそうになった博也を見て、裕一はハッとした。

 裕一はしゃがみ込み、博也と目線を合わせると、頭を撫でた。

「あー、ちゃうわ。兄ちゃんが悪かった。俺が、ちゃんと見てなかったんが悪い。ごめんな?」

 裕一が謝ると、博也は涙を浮かべたまま、首を横に振った。

「ううん。ぼくが悪い。風船欲しかったー」

「そうかぁ」

 息をついた裕一は、自分の指先が冷たくなっていることに気がついた。

 何も無くてよかったと思いながら、指先を擦り合わせる。

「あ、おったおった」

「お待たせぇ」

 睦亮と章五が上気した顔で、走って来た。

 泣きべそになっている博也を見ると、怪訝そうな顔になる。

「何か、食うか?」

 裕一は笑顔を作ると、明るい口調で訊いた。


暗くなり始めてから、家に帰るため、全員で電車に乗る。

 ちょうど空いていた席に、忠成と章五を座らせる。

 その向かいが空いたため、睦亮と裕一で座る。

「ほら、博也」

 裕一は博也を抱き上げると、膝の上に乗せた。

 しばらく経つと、忠成と章五がうとうとし始めた。

 それを見ていた裕一は、右肩に重さを感じ、顔を向けた。

 睦亮も眠り始めている。

「んー……」

 博也も眠そうに目を擦っていることに気付き、裕一は微笑んだ。

「着いたら起こしたるから、寝とき」

「……風船はぁ?」

「ちゃんとあるから、大丈夫やで」

「はーい……」

 博也は安心した様子で、目を閉じた。

 裕一は、網棚にぶつかってゆらゆらと浮いている風船を見上げる。

 今度は全員で行くのもいいな、と思いながら、裕一も目を閉じた。

 

 



080624初稿


観覧車で終わらせるか、電車で終わらせるか悩んだんですが……。

遊園地で8人動かすのは無理だと思ったので、5人に。

遊園地・着ぐるみ・風船って、個人的には、少し怖さを感じるものだったりします。


20111107 改稿


呼び方変更。