「――で、どうして、こういうことになってるのかな?」
将成は、腰に手を当てた姿勢で訊いた。呆れと笑いが混ざったような口調だった。
将成の前には、もうすでに片方の靴を脱いでいる友晴と、玄関に立ったままで困惑した表情の正孝がいた。
「三重くんが鍋作ってくれるから、千川くんも仲間に入れてあげようと思って」
友晴はそう言いながら、部屋に入っていく。
「お前さぁ、俺が家にいなかったらどうするつもりだったんだ?家にいたって、誰か来てるとか」
友晴が脱ぎっ放しにした靴を揃えながら、将成が言った。友晴はきょとんとした顔で振り返る。
「え?だって千川くん、今、彼女いないし。曲作るって言ってたから、家にいると思ったし」
「はいはい」
将成は苦笑すると、立ったままの正孝を促した。
正孝は、お邪魔します、とつぶやくと部屋へ上がった。
玄関を入ると小さめのキッチンがあり、バスルームとトイレがある。奥には広めの部屋があった。モノトーンで統一された部屋はシンプルで、使い易そうに見える。
真ん中には小さめの炬燵があり、その上には大学ノートとボールペン、ビールの缶や日本酒のビンなどが乗っている。ギターも3本ほど、手に届く範囲に並べてあった。
「ちゃんと曲作ってたんだね」
すでに炬燵に入っている友晴は、勝手にノートをパラパラとめくりながらつぶやいた。
「そう言っただろ」
「だから、三重くんと応援に来たんじゃん」
「応援ねぇ」
将成は仕方無さそうに、冷蔵庫を開けた。
「鍋っていっても何もないぞ。んー、大根と人参、キャベツが少し。食べたいって言ってるだけで、材料買ってきてないんだろ?」
「何とかなると思って」
あっさり答える友晴に、将成は「負けた」という表情になった。正孝を振り返ると、苦笑する。
「まったく……。鍋、正孝が作るんだろ?」
「はぁ、そうらしいです」
「材料、何がいるんだ?買ってくる」
「あ、場所教えてもらえば、俺が行ってきますよ」
財布と上着を取り、玄関に向かう将成に、正孝はあわてて申し出た。将成は笑って、軽く右手を振る。
「いいよ。気分転換しようと思ってたとこだし」
「じゃ、俺も行きます」
「そうか?なら、一緒に行くか」
将成はそう言うと、部屋の中の友晴へ声を掛けた。
「炬燵の上、片付けといて」
「はぁい」
友晴の返事を聞くと、将成は外へ出た。あわてて正孝もその後を追った。